俺様なアイツのしつけ方。
水結は、慌ただしく帰ってきた姉を見て驚いた。


「琴羽ちゃん!? ちょっ…ずぶ濡れでどうしたの!?」

「ごめん、今急いでるから!」


琴羽は水結を押し退けて、部屋に駆け上がっていった。

ドアを開け放つと、部屋に転がり込み勉強机についている引き出しを次々と開けていく。


「ない…ない…、どこだっけ!!」


至るところを開けても目当てのものはなかなか姿を現してくれない。


「えっと…」


必死に考えを巡らせる。

そっとポケットから取り出したキーホルダーを見つめていると、昔のことを思い出す。









「……」


ガヤガヤと賑やかな教室で、1人机を見つめたまま動かない少女。


「また琴羽ちゃん1人だぁ…」


それを見て、1人の女の子が指を指した。


「琴羽ちゃんっていつも座ってる」

「話しかけにくいよね」


クラスメートの話し声が聞こえてきて、琴羽はますます俯いた。

人見知りの激しい琴羽は、なかなかクラスに溶け込めずにいた。

気がついた頃にはもう既にグループが出来ていて…

琴羽は1人ぼっちになった。


「ねぇ、校庭でドッジボールやろ-!!」

「みんなでやろうよ」

「駄目だよ、琴羽ちゃんは抜き。誘いたくないもん」


誰かの声が鋭く琴羽の胸に突き刺さる。

泣きたいのを唇を噛み締めることで耐えていた琴羽だったが、もう限界が近かった。


(もう帰りたい…)


ぎゅっ、と目を瞑って立ち上がろうとした琴羽だったがその時手が差し出された。


「え…」


気配を感じて目を開ける。

まず見えたのは女の子物の洋服。

ゆっくり顔を上げていくと、1人の女の子が立っていた。








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