俺様なアイツのしつけ方。


未だ状況を掴めない琴羽に、教室の前の方の席に座っている優が振り返ってため息をついた。


「琴羽話聞いていなかったでしょ」

「はあ…」


苦笑する琴羽。

優はやっぱりね、という表情をした後説明を始めた。


「今年うちのクラスは、男子メインの喫茶店をやることにしたの」

「男子メインの喫茶店…?」

「そう。いわゆる、ホストみたいなね。うちには小宮君がいるから」

「まさか…」


ここまで説明されると、なんとなく話が見えてきて、琴羽はごくりと唾を飲んだ。

すると学級委員が、ぱんっと両手を合わせた。


「だから夏野さんに、小宮君がホストやってくれるように説得して欲しいのよ!!」

「はぁ?!」


すると一斉に男子も頭を下げてきた。


「頼むよ、夏野!!」

「今年の優勝は小宮にかかってんだ!!」

「あいつがいねぇとホストで成功は夢のまた夢なんだよっ」

「夏野頼む!!」


男子の迫力に、唖然としていると女子も両手を合わせた。


「お願い、夏野さん」

「私達当日は裏で料理作りなんかだから、人数も小宮君がいないと大変なんだよね」

「私達は男子手伝えないし…」

「小宮君さえ来てくれれば、男子も気合い入ると思うのっ!!」


ついにはクラス総出で、琴羽に頼んでいる。

琴羽はぐるり、とみんなの顔を見渡した。

みんな必死で琴羽の返事を待っている。

これで断ったら、みんな泣き出してしまうんじゃないかというくらいの迫力だ。

しばらくして琴羽はため息をついた。


「…頑張ってみるよ」

「ほんとぉ?!」


クラスが大騒ぎになる。

中には抱き合って喜ぶ女子もいた。

まさかこんなに喜んでくれるとは。

学級委員が声をかけ、みんな自分の席へ落ち着き、更に喫茶店への打ち合わせが進んでいく。

しかし相変わらず、当の本人の蓮の姿がない。


「なにしてんだか…」


琴羽は窓の外を見つめた。









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