シンデレラは何ルート?《王子or魔法使い》
ギュッ____
私の身体はいつの間にか、すっぽりと王子の腕の中に収まっていた。
私は驚きのあまり、退けることもできなくただただその場で硬直していた。
ふわっ
(あ…)
王子から良い匂いが漂ってきた。
惑わせるようなとても刺激的な、でも、どうしてかわからないけれど、私を落ち着かせてくれる香り___
私は頭がぼーっとしたまま、抱きしめられていた。
少し時間が立ち、我にかえった私は王子の胸元を強く押し、離れようとした。
「王子…離れてください。」
「嫌だ。」
だが王子はそう言って、腕にいっそう力を入れ私を抱きしめた。
私は離してくれないことよりも、王子の口調がこの時だけ変わったことに驚いた。
「王子…?
舞踏会が始まってしまいます。
主役のあなたが居なくては意味がありません。行きましょう。」
「…僕が居なくても大丈夫です。この誕生日パーティーの本当の目的は花嫁探し。僕が良い女性を見つける事が出来れば、舞踏会に出る必要はありません。」
少し身体を離し、私の目を見つめて
きっぱりと言った。
「で、でも…まだ王子は見つけていないのでは?私とこんな所にいてはいけません。早く素敵な女性を探しにいってください。」
私は思ってもいないことを
ぺらぺらと言い放った。
本当は、嫌だ。
他の女性の所に行くなんて。
ずっとこのまま抱きしめてほしい。
____あぁ、わかった。
出逢って数分しかたっていないけれど、
王子のことは何も知らないけれど、
私はきっと彼に惚れたんだろう。
『あの少年かもしれない』という前提があるとは言え、こんな簡単に恋に落ちてしまうなんて_____
(私も単純ね)
ふふっ、と笑みがこぼれた。
それを不思議に思った王子は「?」
と、首を傾げた。