シンデレラは何ルート?《王子or魔法使い》
「あの、王子…!」
そう言った時にはもう、彼女は僕の腕の中にすっぽりと収まっていた。
混乱しているのか、何も抵抗してこない。
小さくて細くて、壊れてしまいそうなほど柔らかい体。
このままずっとこうしていたい、そんな風に思った時だった。
「王子…離れてください。」
冷静になったのか、彼女はそう言って僕の胸元を強く押した。
少しショックを受けたが、負けじと言い返した。
「嫌だ。」
つい口調を変えてしまった。
すると彼女は少し不安気に
「王子…?
舞踏会が始まってしまいます。
主役のあなたが居なくては意味がありません。行きましょう。」
と、言った。
そんなこと、心配しなくても良いのに。
自分の意志で僕が勝手に
君を連れ出しただけだ_____
「…僕が居なくても大丈夫です。この誕生日パーティーの本当の目的は花嫁探し。僕が良い女性を見つける事が出来れば、舞踏会に出る必要はありません。」
少し身体を離し、彼女の目を見つめて
きっぱりと言った。
「で、でも…まだ王子は見つけていないのでは?私とこんな所にいてはいけません。早く素敵な女性を探しにいってください。」
悲しかった。
人気のないところへ連れ出し、どうしようもなくなって抱きしめた。
こんなことをすれば、普通なら嫌われてしまうだろう。
だけど彼女は嫌がらなかった。
(いや、離れてとは言われたけど。)
だから、少なからず彼女は僕に好意があるんじゃないかと自負していた。
……ただの自惚れだったのか。
なんて僕は馬鹿なんだろう。
自己嫌悪と恥ずかしさが頭の中でぐるぐると渦を巻いていた。
すると、その思いとは裏腹に
彼女はいきなりふふっ、と微笑んだ。
わけがわからくなり、僕はハテナマークがたくさん飛んでいた。