シンデレラは何ルート?《王子or魔法使い》
魔法使いの少年
「…懐かしいなぁ。」
私は男の子と別れてから10年間、ずっと彼の言葉を思い出しながら頑張ってきた。
彼のことを忘れた日なんて1日もない。
きっとあれが私の『初恋』っていうものなんだと思う。
でも________
「彼は覚えてないんだろうな。」
はぁ、
とまた溜め息がこぼれる。
「探してみせる、って約束したのになぁ…。」
探す、とあの時彼に言ったものの、朝から夜まで働き続ける今の私にはそんな時間なんてないのだ。
名前、住んでいる場所、私は彼のことを何も知らない。
だから探し出すなんて無謀すぎる。
……と、思っていた。自分自身。
でも、つい先日買い物に行っているときに、ある話が私の耳に入ってきたのだ______
「ねぇ奥様、ご存知?」
「何をですの?」
「明日の王子の18歳の誕生日に城で舞踏会を開いて、お妃を選ぶらしいわよ。」
「あら、王子ももうそんな年なのねぇ。」
「しかもその舞踏会、誰が行ってもいいらしいのよ。だから私の娘も行かせようかと思って。」
(舞踏会、かぁ…私には関係のない話ね。)
「もし王子に見初められたら玉の輿ね。」
「ええ、楽しみだわ。
頑張ってお妃になってもらいたいものよ。」
「もしそうなったら羨ましいわぁ。王子は本当に素敵だもの。」
「そうね。私たち国民のことを何よりも考えてくれているし、一国の王子として、とても立派な方だわ。」
「それに加えて心優しい性格、美しい声、すらっとした長身、そして一番は…」
「「翡翠色の大きな瞳~!!!」」
(__翡翠色の瞳!?)
「本当に綺麗よね、あの翡翠色。」
「一度見ただけで引き込まれるわ。」
(まさか…でも…もしかして…!!)
「まぁ私たちが妃になれるわけじゃないのだけれどね。」
「それもそうね。」
「ふふっ、じゃあそろそろ帰りましょうか。」
(明後日の舞踏会…。妃…。)