シンデレラは何ルート?《王子or魔法使い》
私はあの話を聞いてから、ずっと考えていた。
王子はあの男の子なんじゃないか_____
翡翠色の瞳なんて、普段見ることはほとんどない。
というよりむしろ、あの少年くらいしか今までに出会ったことがない。
だから私は、確信に近い、大きな期待をしていた。
でももし王子が、
本当にあの男の子だったら___
今日の舞踏会で妃を選んでしまう。
見知らぬ他の女性を妃に…
考えただけで嫌になる。
私たちは小さい頃に一度会っただけ。ただそれだけの繋がりでも、私は彼が好き。
幼いながらも、10年間ずっと想い続けてきた。
その大切な人が自分のすぐ近くにいる。
なのに…
「他の誰かと結婚しちゃうなんて、嫌…」
そう小さく呟いた時だった。
バタンッ
ドアを勢いよく開ける音と共に
「「シンデレラッ!!」」
という綺麗なハモリで私は呼ばれた。
「どうしました?お姉様たち。」
「「私たち、どちらがより綺麗?」」
お姉様たちは美しいドレスに負けんとばかりの宝石の数々を身に付けていた。
「どちらもとてもお美しいです。」
ドレスや宝石が、という言葉は一応飲み込んだ。感情のこもっていない上辺だけの言葉。
「ふ~ん、まぁ当然ね。」
「この日のためにお母様がわざわざ買ってくれたの。羨ましいでしょう?シンデレラ。」
「…はい。とても。」
毎日のように言われる嫌味。慣れていたはずだった。でも_______
「さぁ、どちらが王子様の妃になれるか、勝負よ。」
「どちらが選ばれても恨みっこなしね。」
「____!?」
驚きを隠せなかった。まさかお姉様たちも舞踏会に行く、ましては妃の座を狙っているなんて…
私の動揺に気付いたのか、
「…はぁ~ん?シンデレラ。もしやあんた、舞踏会に行きたいとでも思っているの?」
お姉様は私を小馬鹿にしたように言った。
「え、本当に?笑わせるわね。
あんたが行けるわけ無いでしょ。」
「もし行けたとしても、王子に選ばれるわけがないわ。」
「それもそうね。諦めなさい?」
母親に似た、甲高い声が私をますます不快にさせる。
嫌味を言われ慣れているとはいえ、これに対しては別だった。
私が必死に怒りを抑えている時、下からお母様がお姉様方を呼ぶ声が聞こえてきた。
「あら、お母様だわ。」
「もう時間かしら。」
やっと部屋から居なくなる。正直ホッとした。このまま嫌味を言われ続けていたら私は手が出ていたかもしれない。
「流石にそれはなぁ…」
想像しただけで、その後が怖い。
つい苦笑いしてしまう。
「何か言った?シンデレラ。」
「い、いいえ。お姉様。」
慌てて否定する。
「そう。まぁいいわ。」
「私たちは今から舞踏会に行くから、その間留守番をしっかりしてちょうだいね。」
「じゃあ行ってくるわ。」
「行ってらっしゃいませ。
お気をつけて。」
バタンッ