Dear you
『じゃあお兄ちゃんは、幸せな人だね!』
「え……………………?」
『ママがね、いつも言ってるよ!!!
“好きな人がいることは素敵なことで、
とっても幸せなことなのよ”って』
「っ…、」
“ねぇ?好きな人がいるって幸せなことね”
いつかの彼女の言葉が蘇る。
『ママに内緒ねって言われてるけど、
お兄ちゃんには教えてあげる!あのね…』
【ママにはね、とっても大切で、とっても大好きな人がいたの。その人とはもう昔にお別れしちゃったけどね。でも…
一緒にいれて本当に幸せだった。悲しい
こともあったけど、嬉しいことの方が
ずっと多かったから】
『…だから、ママは恋はとても素敵な
ことだって思うの、って』
「っ…」
ああ、君は俺を泣かせるのが本当に
得意だな。
ポロポロと眸から流れる大粒の涙が
地面に滲みをつくっていく。
でも、そっか…っ
(君は、そんな風に俺とのことを
想ってくれていたんだね…—————)
涙を溢す俺の頭を優しいぬくもりが
撫でてくれる。
『お兄ちゃんそんなにいっぱい泣いたら
“ほんと、泣き虫なんだから”ってママに
言われちゃうよ?』
【———…ほんと、泣き虫なんだから】
「…うん…、そうだね…っ」
『“また”……言われちゃうね』