Dear you
————…涙が溢れる。
だけど、止めようとは思わなかった。
「……っ………」
手紙には、恥ずかしくなるようなこと
ばかりが書かれていて。
ここが好きだった、とか。
こういう仕草が可愛かった、とか。
私のこと、すべてが。
—————…愛しかった、とか。
そんな彼の言葉が全部伝わってくる。
ああ、本当に。
君は私を泣かせるのが得意なんだから。
でも、そっか…っ
(あなたは、そんな風に私とのことを
想ってくれていたのね…—————)
『ねぇ、ママ』
「んー?なぁに…っ?」
ずっと側にいてくれた一華を抱き上げる。
『ママのネックレスに付いてるこの指輪』
『お兄ちゃんとおそろいだね!』
「……っ、そうだね」
もうあれから5年が経ったね。
私がお母さんになるなんて、あの頃の
君は思ってもみなかったでしょう?
一華と私は似てた?
周りからはそっくりねって言われるのよ。
———うん…、会いたいなぁ。
もう1度だけ、もう1度だけ。って…。
ずっと思っていたの。
…—————だけど。
きっと、ここまでなんだね。
“Dear…”のそのつづきを、私は最後まで
書くことはできなかったけど。
あなたが繋いでくれたその言葉。
明日も、明後日も、ずっとずっと。
私の愛した人が。
幸せでありますよう…————。
Dear you.
—————…愛した人へ。