Dear you
愛した人へ
「うぁーーんっ…、ママぁ…どこぉ?」
泣いても、叫んでも、ママの姿が見える
ことはなくて、代わりに話しかけてくる
大っきいオトナの人はとても怖くて。
逃げるように泣きながら歩き回って、
また知らない人に声をかけられて。
「ママ…ママぁ……っ」
どんどん小さくなる声に、周りのオトナ達はとうとう私に気付かなくなった。
怖い、怖いよぉ…っ、ママぁ…。
もうどうしようもなくなって道路の端っこにぺたりと座り込み保育園の先生に教えてもらった三角座りをして丸まる。
ママとのお約束、守らなかったからだ。
もう悪い子だから…ママに会えない…。
そう思ったら、またいっぱいの涙が
出てきて止まらなくなった。
「………ぐすっ…ママぁ…」
『————…泣き虫な子はだーれだ』
聞こえた声に俯いていた顔をぱっと上げて大きな声で「ママ…!!」って叫んだ。
なのに。
『あ〜、ママ…ママかぁ。ごめんね。
さすがに俺もママにはなれないかなぁ』
見えた顔は全く知らない人で、その人は
困ったように眉を下げて笑っていた。
ちがった…、ママじゃなかった…。
「ママ…じゃ…ないいぃぃぃ!!!!」
『おわっ、ごめんね!泣かないで!!』
急に泣き出した私に驚く目の前の人。
それでも涙を止める方法がわからない
私はひたすら泣くしかなかった。