Dear you




『っ、………ありがとう』


ちょっとだけお兄ちゃんが笑ってくれた。


「もう痛くない?元気になった?」


『うん、もう元気だよ。ありがとう』


そう言うと私をひょいっと持ち上げて
抱っこしてくれたお兄ちゃん。


「わあ!!」


『ねぇ?もしかしてお嬢さんは迷子?』


「…………うん」


『そっか、じゃあママを探そう』


「一緒に探してくれるの?ずっと一緒に
いてくれる?」


『うん、いるよ』


優しく笑ってくれるお兄ちゃんに、今まで不安だった気持ちが一気になくなって、
その優しさに甘えるように抱きついた。


「ありがとう…お兄ちゃん」


『だーいじょうぶ。俺が絶対に見つけて
あげるから』


「うん…!」


この人の言葉は不思議と力をくれる。
そう、感じた。


『じゃあ、ママとはぐれた場所まで
行こうか』


「うん。ねぇ、お兄ちゃん」


『どうした?』


「自分で歩く〜」


『お、偉いねぇ』


そう言いながらお兄ちゃんは私を
ゆっくり下ろしてくれる。


でも、ちょっとでもお兄ちゃんの
ぬくもりに触れていたくて。


「手ぇ…」


『て?』


「手繋いじゃ…ダメ?」


小さな小さな声。
不安な顔は下を向いて隠す。でも…


すっと目の前に差し出された私の手よりもずっとずっと大きな手。そのまま辿るように顔を上げる。


『お手をどうぞ、お姫様?』



——…笑顔を浮かべて、その手を掴んだ。





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