アイバナ
 食事を終え、食器洗いは私が買って出た。料理においては殆ど役に立たなかったため、せめてもの罪滅ぼしという意味を込めて。

 それを終えて隣の洋間に移れば、彼はノートパソコンと向き合っていた。

 大学生はレポートだ何だと大変だと聞くが、キーボードを叩いていないあたり、それではないようだ。そのための調べものという線も残ってはいるが。

 何をしているのか、尋ねるべきか考えあぐねていると、彼の顔が此方を向く。


「……美波ちゃん、下着のサイズは?」

「は?」


 突然何を聞いているのだろう、この人は。えぇと、下着のサイズ……いや、私は私で何故、馬鹿正直に答えようとしているのか。

 殆ど反射で返した一文字により、数度室温が下がったように思える空間。それを打ち消すかのように、いやいや、と彼が慌てて首を振る。


「ほら、お風呂入ったり着替えたりしなきゃでしょ。下着だけそのままって訳にもいかないし」


 要は、取り敢えず通販で買い揃えるからサイズを教えろ、と。

 いや、それなら私にパソコンを渡して勝手に選ばせてほしい。アウトレットの類で済ませれば、そこまで値段も張らないだろう。

 というか、つまり今彼はレディースの下着の通販サイトを見ているということか。幾ら私のためとは言え、何とも言い難い状況。

 一先ず自分に選ばせてほしいという旨を彼に告げれば、呆気なく画面が此方に向けられた。此方に回り込んで一緒に見ようという気もないらしい。正直安心した。


「あぁ、悪いんだけど、財布の関係で三組までにしてね。一通りカートに入れたら教えて」

 分かった、と返そうとして一度立ち止まる。カートに入れたら教えて、って要は結局彼も、私の選んだ下着を見るということではないか。

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