TRIGGER!
オートロックを開けてマンションの中に入ると、三階のフロアは、エントランスになっていた。
広々とした空間には観葉植物などが置いてあり、クリームイエローの床も綺麗に磨かれている。
「右手は管理人室、エレベーターは左に一機あります」
言いながら風間は管理人室のインターホンを押す。
「今日からここに住むんですから、管理人さんに挨拶するのが常識なので」
面倒くさいこと、この上ない。
少し待つと、部屋の中から一人の老婆が顔を出した。
白い三角巾を被り、オレンジ色のエプロンをしている。
顔に刻まれた深いシワと、にこりともしない表情。
背は彩香の肩くらいしかなく、背中は少しも曲がってはいない。
ホウキを持った姿勢も素晴らしく正しい。
「あんたかい」
鋭い眼光で、老婆は風間を見上げた。
「どうも。今日からお世話になります、峯口彩香さんです。彩香さん、こちらは管理人の北沢さんです」
風間が紹介する間も、彩香はポケットに手を突っ込んだまま、タバコをふかしている。
老婆は黙って彩香に歩み寄る。
そしていきなり、ホウキを彩香の顔すれすれにひと振りした。
まさかそう来るとは思っておらず、そしてその速さに驚いて、彩香は思わず後ろに仰け反った。
「なっ・・・何すんだババァ!」
彩香は怒鳴る。
だが北沢という老婆は、床に落ちたタバコをゆっくりと拾い、グシャリと素手で揉み消した。
「なっ・・・!?」
あんぐりと口を開けたまま、彩香は固まる。
北沢は、そんな彩香を睨み付けて。
「くわえタバコもいいけどね、お嬢ちゃん。床に灰の一つでも落とした日にゃ、どうなるか分かってるだろうね?」
あまりの迫力に、彩香は動けない。
「いや北沢さん、彼女は今日からここに住むんですから、こちらのルールは追々分かっていくと思いますよ」
風間が静かにそう言うと、北沢はそうだねぇ、と頷いて。
「ま、今日だけは許してやるよ」
「私からもよく言っておきますから」
では、と、風間はエレベーターの方に向かって歩き出した。
彩香も慌ててついて行く。
広々とした空間には観葉植物などが置いてあり、クリームイエローの床も綺麗に磨かれている。
「右手は管理人室、エレベーターは左に一機あります」
言いながら風間は管理人室のインターホンを押す。
「今日からここに住むんですから、管理人さんに挨拶するのが常識なので」
面倒くさいこと、この上ない。
少し待つと、部屋の中から一人の老婆が顔を出した。
白い三角巾を被り、オレンジ色のエプロンをしている。
顔に刻まれた深いシワと、にこりともしない表情。
背は彩香の肩くらいしかなく、背中は少しも曲がってはいない。
ホウキを持った姿勢も素晴らしく正しい。
「あんたかい」
鋭い眼光で、老婆は風間を見上げた。
「どうも。今日からお世話になります、峯口彩香さんです。彩香さん、こちらは管理人の北沢さんです」
風間が紹介する間も、彩香はポケットに手を突っ込んだまま、タバコをふかしている。
老婆は黙って彩香に歩み寄る。
そしていきなり、ホウキを彩香の顔すれすれにひと振りした。
まさかそう来るとは思っておらず、そしてその速さに驚いて、彩香は思わず後ろに仰け反った。
「なっ・・・何すんだババァ!」
彩香は怒鳴る。
だが北沢という老婆は、床に落ちたタバコをゆっくりと拾い、グシャリと素手で揉み消した。
「なっ・・・!?」
あんぐりと口を開けたまま、彩香は固まる。
北沢は、そんな彩香を睨み付けて。
「くわえタバコもいいけどね、お嬢ちゃん。床に灰の一つでも落とした日にゃ、どうなるか分かってるだろうね?」
あまりの迫力に、彩香は動けない。
「いや北沢さん、彼女は今日からここに住むんですから、こちらのルールは追々分かっていくと思いますよ」
風間が静かにそう言うと、北沢はそうだねぇ、と頷いて。
「ま、今日だけは許してやるよ」
「私からもよく言っておきますから」
では、と、風間はエレベーターの方に向かって歩き出した。
彩香も慌ててついて行く。