TRIGGER!
「何なんだあのババァは」


 エレベーターを待っている間、彩香は小声で言った。


「このマンションの管理人です」


 至極真面目に、風間は答える。
 んなこた分かってんだよ、と彩香は言い返すが、エレベーターのドアが開いた。
 二人で乗り込み、風間が五階のボタンを押す。
 そのボタンを見るとエレベーターは三階から屋上までしか稼働しないらしく、下の店舗と住居は完璧に分断されているらしい。
 うら若い女の一人暮らしには丁度いい安全対策だが、マンションの外から家に入ろうとすると、店舗裏の階段を三階まで登らなければならない、というのが少しかったるかった。


「このマンションは、四階から六階までが住居になってますが・・・住んでいるのは、今のところあなたの他に四人です」


 エレベーターが上昇し、五階で止まる。
 その廊下を見て、彩香は少し驚いた。
 まるで何処かのホテルのような絨毯が敷き詰めてある。
 灰を落として絨毯を焦がしでもしたら、あのババァに何をされるか分かったもんじゃない。
 突き当たりまでに、ドアが広い間隔で三つ見え、最初に思った通り、フロアには三部屋しかない事が分かる。
 廊下の壁には、ドアとドアの間にランプ風の電気が灯っている。
 501号室は、その一番奥だ。
 四階から六階まで同じ造りだとしたら、部屋数は九部屋。
 管理人のババァもここの住人として数に入れたら、その九部屋には自分も入れて四人しか借り手がいない事になる。
 こんな豪華な造りのマンションにそれでは、割が合わないのではないか。
 まぁ、彩香にとってはどうでもいい事ではあったが。
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