TRIGGER!
「・・・慰謝料ならこっちに回しとけ」
そう言った時、峯口のタバコの灰が、デスクの上に落ちた。
風間は一歩前に進み、スラックスのポケットからハンカチを取り出して無駄の無い動きで落ちた灰を拭き取る。
そして言った。
「クラブ“パシフィック”も、ここでは多少名の知れたホームです。下っ端の黒服一人の為に、我が“峯口建設”相手に、事を大きくするなど有り得ません」
「じゃあ、お前の報告っつーのは?」
灰を拭いてくれた事に、ありがとな、と礼を言いつつ、峯口は聞いた。
「黒服の仲間が、今朝作業をしている従業員にリベンジを」
そこで初めて、峯口は慌てたように身を乗り出す。
「こっちの従業員に怪我は?」
「ありません」
風間の言葉に、峯口はほっと胸を撫で下ろした。
「ですが」
「風間。もう前置きはいいから、結果だけ報告しろ」
「次が結果です。リベンジにやって来た連中五人、今朝まとめて仲良く入院したそうです」
はぁぁぁ~、と、峯口は髪の毛を掻き毟る。
「一人で五人、やったのか。でもまぁ、アイツならやりかねねぇな・・・ま、良かったじゃねえか、これだけコテンパンにやられりゃ、またこっちを構おうなんて連中は出て来ねぇだろうよ」
「はい。ですが」
「まだ何かあるのかよ?」
「その場にいた他の従業員全員が、今日限りで退職願いを提出しました」
風間の報告を聞き、今度こそ本当に、峯口は大きなデスクに突っ伏した。
さっき風間に灰を拭いて貰った事に、改めて感謝する。
「・・・仕事が終わったらここに顔を出すように言っとけ」
「はい」
返事をすると風間は踵を返し、社長室を出て行った。
今朝の出来事の報告とは言え、まだ昼前だ。
よくぞまぁこれだけ毎日、ネタに事欠かないものだ。
“アイツ”を拾ってから2ヶ月、いささか退屈気味だった生活も、少しは笑えるものになってきた。
とは言え、金の損害ならともかく・・・大切な従業員の損害が出たとなれば、それは問題だ。
末端の従業員を入れれば二千人近くいるこの“峯口建設”も、忙しくて今のところ、人手不足なのだ。
曲がりなりにも社長としては、ここら辺で一発ガツンと言ってやらなきゃならない。
そうでもしないと、他の従業員に示しが付かない。
そう言った時、峯口のタバコの灰が、デスクの上に落ちた。
風間は一歩前に進み、スラックスのポケットからハンカチを取り出して無駄の無い動きで落ちた灰を拭き取る。
そして言った。
「クラブ“パシフィック”も、ここでは多少名の知れたホームです。下っ端の黒服一人の為に、我が“峯口建設”相手に、事を大きくするなど有り得ません」
「じゃあ、お前の報告っつーのは?」
灰を拭いてくれた事に、ありがとな、と礼を言いつつ、峯口は聞いた。
「黒服の仲間が、今朝作業をしている従業員にリベンジを」
そこで初めて、峯口は慌てたように身を乗り出す。
「こっちの従業員に怪我は?」
「ありません」
風間の言葉に、峯口はほっと胸を撫で下ろした。
「ですが」
「風間。もう前置きはいいから、結果だけ報告しろ」
「次が結果です。リベンジにやって来た連中五人、今朝まとめて仲良く入院したそうです」
はぁぁぁ~、と、峯口は髪の毛を掻き毟る。
「一人で五人、やったのか。でもまぁ、アイツならやりかねねぇな・・・ま、良かったじゃねえか、これだけコテンパンにやられりゃ、またこっちを構おうなんて連中は出て来ねぇだろうよ」
「はい。ですが」
「まだ何かあるのかよ?」
「その場にいた他の従業員全員が、今日限りで退職願いを提出しました」
風間の報告を聞き、今度こそ本当に、峯口は大きなデスクに突っ伏した。
さっき風間に灰を拭いて貰った事に、改めて感謝する。
「・・・仕事が終わったらここに顔を出すように言っとけ」
「はい」
返事をすると風間は踵を返し、社長室を出て行った。
今朝の出来事の報告とは言え、まだ昼前だ。
よくぞまぁこれだけ毎日、ネタに事欠かないものだ。
“アイツ”を拾ってから2ヶ月、いささか退屈気味だった生活も、少しは笑えるものになってきた。
とは言え、金の損害ならともかく・・・大切な従業員の損害が出たとなれば、それは問題だ。
末端の従業員を入れれば二千人近くいるこの“峯口建設”も、忙しくて今のところ、人手不足なのだ。
曲がりなりにも社長としては、ここら辺で一発ガツンと言ってやらなきゃならない。
そうでもしないと、他の従業員に示しが付かない。