TRIGGER!
「まぁな。あっちとこっちの世界じゃ、時間の流れも物質もそのまま同じだが・・・どういう訳か人間だけは、混じり合わねぇんだ。言ってみりゃ、誰も知らねぇ秘密の抜け穴って訳だからな」
ここからは、さっき彩香が予想した通りだった。
あっちの世界を通れば、誰にも悟られずにA地点からB地点まで移動出来る。
どんなに探しても、現実にはその人間は消えている訳だから・・・足取りを追う事は不可能。
そんな夢のような抜け穴があるなら、利用しない手はない。
特に闇の世界に生きる人間にとっては、都合がいい。
「何となく分かってきたよ。だけどさぁ」
彩香は背もたれに寄り掛かり、頭の後ろで腕を組んだ。
「“ドア”はあんたが見つけたんだろ? だけど昨日あからさまにうちらにケンカ売ってきた奴らがいたぜ? あっちの世界は、あんたの専売特許じゃねぇのかよ」
「“ドア”はな、こっちの世界のあちこちに点在するんだよ。誰がそれを見付けたって可笑しくねぇ。それにな、人の口に戸は立てられねぇって言うだろ。黙ってても自然と情報は漏れるもんだ」
何だよそれは、と、彩香は呆れる。
要は、商売敵がいるという事だ。
しかもあっちの世界じゃ、法律なんて関係ない。
ハリウッドさながら、街中でドンパチやっても誰も文句を言わない。
それにしても、そんな便利なドアを見つけたのがこの峯口とかいう食えない奴だったというのが、何とも切ない話だ。
真っ当な正義の味方が一番に見付けていれば、今頃はあっちの世界もあんな無法地帯に成り下がってはいなかっただろうに。
ま、この現実世界にそんな真っ当な正義の味方がもしいたら、の話だが。
「しっかしさぁ、よく考えたらスゲェ便利だな。殺人事件起こしても、時効が来るまで簡単に隠れられるじゃんか」
「そう思うだろ。だけどそう簡単にいかねぇのが世の中ってもんだ」
峯口がそう言った時、風間がトレイにコーヒーを乗せて社長室に入って来た。
彩香は首だけをそっちに向ける。
「おっ隼人、お疲れー」
手を伸ばし、コーヒーカップを受け取りながら彩香は言った。
風間は少しだけ眉を動かして、彩香を見る。
峯口は笑って。
「何だよお前ら、いつの間にそんなに仲良くなってるんだ?」
「仲良くなったつもりはありませんし、彩香さんに名前で呼ばれるのも心外です」
峯口の机の上にカップを置きながら、風間は言った。
その受け答えにも、笑いが止まらない峯口。
「ははははっ! まぁいい、どこまで話したっけか?」
「殺人犯が時効まで逃亡出来るか」
コーヒーに口をつけ、アチッとか言いながら彩香が言う。
あぁそうだった、と、峯口は頷いて。
「言うの忘れてたけどよ、あっちの世界に生身の人間が居られるのは長くて一週間。それ以上は無理だ」
「何でだよ?」
「先ずは記憶障害が起き、次に精神障害、最後には廃人になります」
彩香の質問には、風間が答えた。
何だかもの凄い答えを聞いたような気がして、彩香はコーヒーを口に運ぼうとしたまま固まる。
「・・・おいおい、大丈夫なのか?」
峯口の言う通り、そんな上手い話は転がってはいない。
しかも、何でそれを一番先に言わないのか。
そんな危ない世界に、昨日行っていたのか。
ここからは、さっき彩香が予想した通りだった。
あっちの世界を通れば、誰にも悟られずにA地点からB地点まで移動出来る。
どんなに探しても、現実にはその人間は消えている訳だから・・・足取りを追う事は不可能。
そんな夢のような抜け穴があるなら、利用しない手はない。
特に闇の世界に生きる人間にとっては、都合がいい。
「何となく分かってきたよ。だけどさぁ」
彩香は背もたれに寄り掛かり、頭の後ろで腕を組んだ。
「“ドア”はあんたが見つけたんだろ? だけど昨日あからさまにうちらにケンカ売ってきた奴らがいたぜ? あっちの世界は、あんたの専売特許じゃねぇのかよ」
「“ドア”はな、こっちの世界のあちこちに点在するんだよ。誰がそれを見付けたって可笑しくねぇ。それにな、人の口に戸は立てられねぇって言うだろ。黙ってても自然と情報は漏れるもんだ」
何だよそれは、と、彩香は呆れる。
要は、商売敵がいるという事だ。
しかもあっちの世界じゃ、法律なんて関係ない。
ハリウッドさながら、街中でドンパチやっても誰も文句を言わない。
それにしても、そんな便利なドアを見つけたのがこの峯口とかいう食えない奴だったというのが、何とも切ない話だ。
真っ当な正義の味方が一番に見付けていれば、今頃はあっちの世界もあんな無法地帯に成り下がってはいなかっただろうに。
ま、この現実世界にそんな真っ当な正義の味方がもしいたら、の話だが。
「しっかしさぁ、よく考えたらスゲェ便利だな。殺人事件起こしても、時効が来るまで簡単に隠れられるじゃんか」
「そう思うだろ。だけどそう簡単にいかねぇのが世の中ってもんだ」
峯口がそう言った時、風間がトレイにコーヒーを乗せて社長室に入って来た。
彩香は首だけをそっちに向ける。
「おっ隼人、お疲れー」
手を伸ばし、コーヒーカップを受け取りながら彩香は言った。
風間は少しだけ眉を動かして、彩香を見る。
峯口は笑って。
「何だよお前ら、いつの間にそんなに仲良くなってるんだ?」
「仲良くなったつもりはありませんし、彩香さんに名前で呼ばれるのも心外です」
峯口の机の上にカップを置きながら、風間は言った。
その受け答えにも、笑いが止まらない峯口。
「ははははっ! まぁいい、どこまで話したっけか?」
「殺人犯が時効まで逃亡出来るか」
コーヒーに口をつけ、アチッとか言いながら彩香が言う。
あぁそうだった、と、峯口は頷いて。
「言うの忘れてたけどよ、あっちの世界に生身の人間が居られるのは長くて一週間。それ以上は無理だ」
「何でだよ?」
「先ずは記憶障害が起き、次に精神障害、最後には廃人になります」
彩香の質問には、風間が答えた。
何だかもの凄い答えを聞いたような気がして、彩香はコーヒーを口に運ぼうとしたまま固まる。
「・・・おいおい、大丈夫なのか?」
峯口の言う通り、そんな上手い話は転がってはいない。
しかも、何でそれを一番先に言わないのか。
そんな危ない世界に、昨日行っていたのか。