TRIGGER!
「はぁァァ・・・真面目でいい子なんだけどね、秋田くんは。けど度胸がイマイチなんだよなぁ。彩香に向かって『おやめください』なんて通じる訳ねぇのにな」
「今時度胸だけで世の中渡っていける訳でもあるまい。彼はこのまま、使ってやれ。この店を長く続けて行きたいならな」


 ヴェールを少しだけたくしあげて、雛子はミネラルウォーターを飲んだ。


「雛子ちゃんがそう言うと、オジサンそうしようかって気になるんたよねぇ。ま、秋田をクビにする気なんて毛頭ないけどね」


 そんな会話をしていると、黒スーツがザサッと店に入って来る。
 どうやら柴崎が援軍を呼んだらしい。
 だが彩香はニヤリと笑いながら、黒スーツ集団の中に飛び込んで行った。
 既に、飲んでいた他の客は、店から避難している。


「しかし、面白い娘を拾ったものだな」


 後ろで大乱闘が繰り広げられる中、雛子は峯口に言った。
 タバコを取り出し、だろ? と笑う峯口。


「それにな、多少改装が気に入らないからと言ってまた変えようなどと思うな」
「ゲッ・・・バレてる!?」
「お前の顔を見ていたら分かる。だが今夜はダメだ。俺がこの店に居合わせたからな。それに」


 雛子は立ち上がる。


「陽介、お前はセンスが悪い」
「そんな事ねぇだろ!」


 峯口は悔しそうな表情を浮かべる。
 ここで彩香が暴れて店が壊れたら、また会社から予算が降りるかも知れないと思っていたのに。
 雛子を呼んだ上に、趣味にまで文句を付けられた。


「やっぱ・・・俺のポケットマネーで改装するしかねぇかなぁ・・・」


 腕組みをしながら、真剣に悩む峯口。


「言っただろう、体力は温存しておけと」


 彩香の隣に立ち、雛子は静かに言った。


「やかましいマント女だな! たまたま! 偶然だろっ!」
「偶然ではない。予知だ」
「あーもうマジうぜぇ」


 言いながら、彩香は一人の黒スーツを蹴り倒し。
 だが、雛子の姿を見た途端、黒スーツ達はピタリと動きを止めた。


「お前達を占ってやろうか?」


 ニヤリと笑い、黒スーツ達を見据える雛子。
 だが、黒スーツ達は一歩後ずさる。
 そして、一目散に逃げて行った。
< 49 / 92 >

この作品をシェア

pagetop