TRIGGER!
「二つ目の質問なんだが・・・お前らの雇い主である俺は頭脳だ。考えるのは俺だ。そして俺は、頭がいいし腕っぷしも強い。しかもイイ男ときたもんだ」


 そう言う峯口の横顔があまりにも真剣すぎて、ツッコミを入れる事が出来ないでいる彩香。
 峯口はそんな彩香に向き直ると、ニッと笑って。


「だから安心して、好きなように動け。お前にはそれが似合ってる。そしてここにはお前を否定する連中なんざいねぇよ」
「意味わかんね」


 彩香は小さく言った。
 峯口はガハハハハと笑って。


「だってよぉ、彩香はもう柴崎にケンカ売っちゃってるもんなぁ。ま、それもこっちにしてみりゃ都合のいいきっかけだったぜ」


 波も潮風も穏やかで。
 峯口が何故ここに来たのか、分かるような気がした。
 ここには、何もないからだ。
 海岸線の道沿いに、小さな街頭。
 その向こうには、白い壁の小さなお店らしき建物が見えるが・・・それ以外、人工物は何もない。
 この満天の星空よりも明るく毒々しく輝くネオンもない。
 本当に、こんな場所に来たのは、生まれて初めてのような気がする。
 また、今度は昼間にでも、一人で来てみようか。
 彩香はそんな気持ちになる。
 まぁ、太陽が昇っている間に起きれればの話だが。


「あ、でもさぁ」


 ふと疑問が湧いた彩香は、峯口に聞いた。


「明日向こうに行っても、どうやってジョージ達と合流すればいいんだ? 携帯とか持ってるのか?」
「いや、向こうには電波はないからな。こっちから連絡は取れない」
「じゃあどーすんだよ?」


 聞き返す彩香に、峯口はトントン、と自分のこめかみあたりを指さして。


「言っただろ、俺は頭脳だって」


 そうなのか。
 峯口には、ジョージの居場所が分かっているのか。
 ま、そうでもなければ彩香に簡単に、あっちの世界に行って合流しろなんて言う訳がない。
 だが峯口は、砂浜の真ん中あたりで佇む雛子に、手を振りながら大声を掛けた。


「ひっなっこちゃあーん!」


 雛子は何をするでもなく、中空を見つめていていた。
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