TRIGGER!
 だがそれを、彩香は感じ取った。
 戦い方はまだまだだが、社長の見る目はやっぱり確かなものだと、風間は実感する。


「うらぁぁぁ!!」


 雄叫びを上げながら、彩香は改札を乗り越えて来た相手に、真っ直ぐに突っ込んでいく。
 3人とも武器を持っていたが、そんな事にはまるで関心がないらしい。
 しかも、本能的な動きで相手に銃を構えさせずにいる。
 揉み合いの乱闘で、風間も迂闊に発砲する事が出来なかった。
 風間は肉弾戦は苦手だ。
 だが仕方なく、風間も参戦する。
 ――そして、数分後には。


「チョロいな」


 倒れた相手を見下ろし、彩香は吐き捨てて。


「チョロくありません。結構ダメージ受けてますよ、彩香さん」
「やかましい! こいつらそこらのチンピラと違うんだよ!」
「へぇ・・・分かりますか」


 建築現場で、パシフィックの黒服の仲間5人と乱闘した時よりも、かなり手こずった。
 彩香のタンクトップはボロボロで、あちこちに擦り傷を作っている。
 それに比べて風間のスーツは、乱れてもいない。
 ポマードで固められた髪型もそのままだ。


「行きますよ、彩香さん」


 風間はそう言って改札に向かって歩き出す。


「何でこっち行くんだよ」
「ジョージは、何処かのホームに居ますから」
「分かるのか?」


 風間の後を追いながら、彩香は聞いた。
 さも当然、と言う風に風間は頷いて。


「何で分からないんですか? 相手は改札で待ち伏せしていた。何故か? それは、ここから先へは誰も侵入させたくないからです」


 あぁ~なるほど、と彩香は納得した。


「でもさ。何とかならねぇのかよその人を見下すような口調は」
「なりません。ずっとこれですから」


 路線が何本も通っているこの駅のホームは、全部で12ある。
 いくら範囲が絞られたとは言え、この中を探し回るというのも骨が折れる。


「なぁ隼人」
「名前で呼ばないで下さい」


 ピシャリと言い放つ風間に、いいじゃんかと彩香は言って。


「これで分かっただろ。あたしも対処出来るから、手分けしようぜ?」


 二人一緒に歩いていては、効率が悪い。
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