TRIGGER!
「ダメです」


 そんな彩香の提案も、またすぐに却下され。
 ホームに出て、彩香は周りを見渡しながら言う。


「ったく・・・一刻を争うんだろ? なら早くジョージ見つけた方がいいじゃんか」
「そんなに心配ですか?」


 そう聞かれて、彩香は黙る。
 心配か?
 分からない。
 確かあのインチキ占い師の助言で、一刻を争うんじゃなかったのか。
 だから急ぐ。
 けど何故、風間がそこを聞いて来る?
 彩香は答えなかった。
 ホームの中も、人々で溢れ帰っている。
 時間の流れも現実世界と一緒なのだから、もうすぐ正午だ。
 気が付くと、彩香も普通に、雑踏を避けずに歩いていた。
 さっきの乱闘で、大分慣れたという事か。
 電車も、ひっきり無しにホームに滑り込んでくる。
 一つのホームを見て回り、そして次に移動する。
 これを繰り返す間、彩香は喋らなかった。
 こっちが何かを言わない限り、風間も何も言わない。
 何本目かのホームに降りた時、すぐに違和感を感じた。
 雑踏は普段と全く変わらずに、彩香と風間の横を通り過ぎている。
 その中で、ホームに設置されたジュースの自動販売機にもたれ掛かるようにして座っていたのは。
 ジョージだった。


「見ぃつけ」


 彩香は言って、ジョージに駆け寄ろうとする。
 だが風間に襟首を掴まれた。


「迂闊に近寄れません」
「・・・は???」


 目の前にジョージがいるのに。
 そう言い返そうとしたのだが、襟首を掴まれたまま、風間に階段の影に引きずり込まれる。


「なっ・・・!」


 何すんだ、と、怒鳴り返そうとした矢先。
 銃声が響いた。


「なんじゃこりゃぁぁ!?」


 さっきみたいにこぢんまりした音ではない、よく戦争映画に出て来るような、戦場さながらの、爆竹のような派手な銃声。
 頭を低くし、身を強ばらせながらも、彩香はジョージの方を見た。
 動かない。
 ただ単に気を失っているだけなのか、それとも。


「もっと頭を使ってください、彩香さん。ジョージは囮です」
「ってお前、そんならそうと先に言え!」
「すみません、他の事考えてましたから」
「こんな時に!?」


 言いながらも彩香は状況を把握しようと、視線を巡らせる。
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