TRIGGER!
「何ヘマやらかしてんだ、ジョージ」


 銃を下ろすと、風間は呆れたように言った。


「うるせぇ。もう少しで確信つく所だったんだよ。だから少し、深入りしちまった」
「手に負えないなら、そう言って連絡すればいい。定時連絡を怠った時点で、社長がすぐに動いたから良かったものの」
「あーいてててて、腹いてぇ!!」


 階段にうずくまるジョージ。
 風間の口調が、いつもと少し違うのに、彩香は気が付いた。
 それに、さっきの合図。
 何の意味か全く分からなかったが、その合図の後、相手を的確に倒す事が出来たと、彩香は思う。
 何だかんだ言ってこの二人、実は信頼し合っているのではないか。


「話はお前の治療が終わってからだ。手を貸して欲しいか?」


 冷ややかに、風間は言う。
 ジョージはベェーっ、と舌を出して。


「だぁれがテメェなんかに」
「じゃあ行くぞ」


 銃をしまうと、風間は階段を登り始める。


「彩香ちゃぁん、お腹が痛いんだ、手ェ貸してくれねぇかぁ?」
「テメェはさっきあたしのケツ触っただろ」


 彩香の言葉に、階段を登っていた風間の動きが止まる。


「いっ・・・いや、あれはだな、俺に背中を向けてたし、声も出なかったし・・・それで手ェ上げたらたまたま可愛いケツがだな」
「ジョージ」


 数段、階段を降りてくる風間。
 ぎくぅっ、と、ジョージは固まる。


「俺はお前のそう言う所が嫌いなんだよ。さっさと帰って治療だ」


 そう言うが早いか、風間はジョージの腕を掴んで立ち上がらせる。
 ジョージは何故か怯えているように、彩香には見える。
 分からなかったが、彩香は黙って二人について階段を登った。


「なぁ・・・あれだよな、やっぱチエちゃんとこだよな?」


 恐る恐る、ジョージが聞く。


「当たり前だ、お前のその傷は銃創だ。何処の世界に黙って治療してくれる真っ当な医者がいるんだ」
「真っ当じゃなくてもよ、闇医者でいいから他の・・・」
「ないな」


 ピシャリと言い放つ風間。
 項垂れるジョージ。
 何のとこかさっぱり分からない彩香。
 車に乗り込むんで帰途につく間にも、ジョージはどうしても治療を受けたくないと駄々をこねていた。
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