TRIGGER!
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屋上から見るこの景色は、彩香が住む現実の世界と何も変わらないように思えた。
海の方に沈む夕日、オレンジから群青へグラデーションを描く空。
代わりに瞬く、足元に広がる様々な色のネオン。
今宵もまた、ゆっくりと動き始める繁華街。
本当に、何も変わらない。
ここが偽りの世界だなんて、誰が信じられるのか。
「・・・偽り・・・」
彩香は、屋上の手すりに両肘を置いて夕日を眺めながら小さく呟いた。
現実だろうが、違う世界だろうが、何処も同じだ。
何がホントで、何がウソなのか。
考えても仕方ない。
自分が本当だと判断すれば本当なのだ。
“あらぁ、虐待の方だった?”
何故か、水島の言葉が頭に浮かぶ。
彩香はタバコを取り出して、火を点けた。
ゆっくりと煙を、ため息と共に吐き出して。
今の彩香には、何もない。
だから、そんな言葉にも動揺する必要はない。
例えそれが――。
“お前の中は空洞だ。無限に広がる空洞・・・虚無・・・だが安心しろ、お前が気付いていないだけだ。本当に空洞なのかを”
雛子はそう言っていた。
それを思い出し、彩香は思わず声に出して笑ってしまう。
どうせここには、誰もいない。
何もない?
取り敢えず今は、この世界に出会えた事はラッキーだったと、彩香は思っている。
ここで蠢く人間は、現実世界ではみ出した、彩香のような人間ばかりだ。
誰が消えても、何も不思議ではない。
それに。
彩香もとうの昔に、現実世界から消えた人間だ。
いつ何時、何があっても、誰にも迷惑はかからない。
“好きに動け。ここにゃ、お前を否定する奴はいねぇよ”
峯口はそう言った。
「あぁ、やらせてもらうさ」
彩香は呟く。
この世界で、今を生きる。
ここじゃなければ、何処でもいいが。
今のところ、彩香の中の空洞を少しでも埋めてくれるのは、此処しかない。
楽しいよ。
例えどうなっても。
それだけだった。
屋上から見るこの景色は、彩香が住む現実の世界と何も変わらないように思えた。
海の方に沈む夕日、オレンジから群青へグラデーションを描く空。
代わりに瞬く、足元に広がる様々な色のネオン。
今宵もまた、ゆっくりと動き始める繁華街。
本当に、何も変わらない。
ここが偽りの世界だなんて、誰が信じられるのか。
「・・・偽り・・・」
彩香は、屋上の手すりに両肘を置いて夕日を眺めながら小さく呟いた。
現実だろうが、違う世界だろうが、何処も同じだ。
何がホントで、何がウソなのか。
考えても仕方ない。
自分が本当だと判断すれば本当なのだ。
“あらぁ、虐待の方だった?”
何故か、水島の言葉が頭に浮かぶ。
彩香はタバコを取り出して、火を点けた。
ゆっくりと煙を、ため息と共に吐き出して。
今の彩香には、何もない。
だから、そんな言葉にも動揺する必要はない。
例えそれが――。
“お前の中は空洞だ。無限に広がる空洞・・・虚無・・・だが安心しろ、お前が気付いていないだけだ。本当に空洞なのかを”
雛子はそう言っていた。
それを思い出し、彩香は思わず声に出して笑ってしまう。
どうせここには、誰もいない。
何もない?
取り敢えず今は、この世界に出会えた事はラッキーだったと、彩香は思っている。
ここで蠢く人間は、現実世界ではみ出した、彩香のような人間ばかりだ。
誰が消えても、何も不思議ではない。
それに。
彩香もとうの昔に、現実世界から消えた人間だ。
いつ何時、何があっても、誰にも迷惑はかからない。
“好きに動け。ここにゃ、お前を否定する奴はいねぇよ”
峯口はそう言った。
「あぁ、やらせてもらうさ」
彩香は呟く。
この世界で、今を生きる。
ここじゃなければ、何処でもいいが。
今のところ、彩香の中の空洞を少しでも埋めてくれるのは、此処しかない。
楽しいよ。
例えどうなっても。
それだけだった。