TRIGGER!
 掴み合ったままのジョージと風間は、そのままステージに倒れる。


「どっ・・・ドロー! この勝負、ドローよっ!!」


 カンカンカン、と、アイスペールをマドラーで叩き、キウイが叫ぶ。
 ボックス席からはブーブーとブーイングが起きていたが、彩香は気にせずにカウンターに戻った。


「ったく・・・アホらしい」


 そう言って飲み直す彩香。
 イチゴとグレープが、ジョージと風間に肩を貸してカウンターに連れて来る。


「いい加減にしろテメェら。おかげであたしまでいらねぇ出費がかさむ所だ」


 心なしかしょんぼりと、二人は黙ってカウンターに座っている。


「ま、いい機会だから聞いておくよ」


 タバコに火を点けながら、彩香は言った。


「ジョージを撃ったのは誰だ?」


 彩香は単刀直入に聞いた。
 今回の一連の件。
 撃ったジョージを囮にしてまで、風間と彩香を呼び寄せた。
 その黒幕は。


「やっぱり、柴崎のデブで間違いないんだな?」


 クラブ『AYA』で、彩香は柴崎と会っている。
 これで彩香が俺の所にいるのがバレたなと、峯口はあの時言っていた。
 ジョージと風間はとっくに面が割れているだろうし。
 そう考えると、相手は柴崎だと思うのが普通だ。
 だが、風間はゆっくりと首を横に振った。


「そんな単純なものではありません、彩香さん」


 いつの間にか彩香に“さん”を付けているのを見ると、風間の酔いも幾分か冷めたらしい。


「クラブ『パシフィック』と峯口グループは、同じカルテルです」
「カルテル?」
「言わば共同事業者・・・お互いに協定を結んで、困った時は助け合う、そんな関係です」


 そうでもしないと、荒くれ者が集まるこの街では、収集が付かなくなるのだそうだ。
 じゃあやっぱり工事現場でパシフィックの黒服に手を出したのはマズかったのか、と、彩香はふと思う。
 そんな事はもう、後の祭りだが。
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