TRIGGER!
 異様な物音に気付いていたのか、店の中では黒服達がざわめきながらこっちを見ていた。
 豪華なドレスを身にまとった何人かのホステス達は、店の奥で怯えた様子でこっちを見ている。


「・・・おやぁ?」


 ニヤリと笑い、彩香は黒服達に視線を送った。


「退院おめでとう」


 その中の一人に向かって、そう声を掛ける。
 工事現場で彩香に因縁をつけてきた、あの男だ。
 明らかに視線を合わせようとしないその男に、彩香はコツコツと足音を鳴らして近付く。


「どうした? もう怪我はいいのか?」
「はっ・・・はい」
「良かったなぁ。で、ちょいと聞きたい事があるんだけどな」


 グイッと顔を近付けて、彩香は男のネクタイを緩く掴んだ。


「ここのオーナーに用事があるんだよ。いるか?」
「いっ・・・いや・・・いま、せんよ」
「ふーん。ま、いっか」


 彩香はチラリと店の奥に視線を送り。


「ついでに聞くけどな、アリスって女、覚えてるか?」


 その言葉に、黒服達は微かに反応した。
 彩香は笑う。


「・・・タバコ、貰ったんだよ」


 言いながら、彩香は男のネクタイを絞めあげた。
 苦しそうに呻く黒服。


「嘘はキライだねぇ」
「てっ・・・テメェふざけんな!!」


 男は彩香に飛び掛かる。
 それを合図に黒服達は一斉にこっちに襲いかかった。
 だが寸前で彩香はその場を飛び退いて、手近にあったスタンドライトをひっ掴む。
 それを皮切りに、店の中は大乱闘になり。
 悲鳴が響く中、四半刻後に店の中で立っているのは彩香とホステス達だけだった。
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