TRIGGER!
「それで、この派手な訪問は・・・君の十八番なのかね? 最初に会った時も、峯口さんの店をメチャクチャにしてましたなぁ」
「そうだな。ま、自然の流れってヤツだよ」


 彩香は言いながら、シャンパンを飲む。
 柴崎は笑い。


「だけど、少し困りましたな。峯口さんの所とウチは、まぁ言わば同士のような関係でしてな…この狭い町では、お互いに助け合わないとやっていけんのですよ。お嬢さん、君の立場はもう分かっているよ。そんな貴女がここへ殴り込んだとなれば…辛うじて保たれていたこの街の均衡が乱れるってもんです」


 彩香は黙ってシャンパングラスを傾けている。
 柴崎は続けた。


「前にウチの従業員を病院送りにしてくれましたな。あの時はこの街に来たばかりだから知らないだろうと、私は大目に見たつもりなんだが…峯口さんに、我々の関係を聞かなかったのかね?」
「聞いたよ」


 グラスをテーブルに置いて、彩香は静かに言った。
 それを聞いた柴崎は、声を上げて笑う。


「あっはっは! それならお嬢さん、君は愚か者だ。我々の関係を知りながら、こんな真似をしているのかね?」
「あぁ、そうだな」
「そうか、そちらがそう言うつもりならこっちにも考えがある。峯口さんと我々は協定を破棄・・・」
「ゴチャゴチャよく喋るタヌキだな。いやブタか?」


 柴崎は息をのむ。
 彩香が、その額に銃口を向けたからだ。
 同時に、後ろに立っていたガードも、銃を彩香に向けた。


「誰と誰がどうとか、協定がどうとかあたしにゃ全く関係ないね。死んだら“無”だ。そうだろ?」


 黒スーツは、引き金に手を掛ける。
 だが柴崎はそれを制した。


「まっ待て、お前達」
「よぉく分かってるじゃん。今この状況で、あたしがたった一発撃てればそれでジ・エンドだもんなぁ!」


 柴崎に銃口を向けたまま、彩香はケラケラと笑う。


「ま、まぁ取り敢えず落ち着いて話を聞こう。座りなさい」
「やだね。あたしまだ、銃って慣れてないんだよねぇ。だからこの体勢崩したら、間違って引き金引いちゃうかも」
「わっ・・・分かった! そのままでいい。君の目的は何だ?」
「目的?」


 彩香は首を傾げる。


「目的ねぇ・・・そうだな、強いて言えば」


 カチャリ、と銃口を柴崎の額に、ピッタリとくっつけて。


「あたしの胸触ったの、謝れよこの変態」
「は? そっ・・・そんな事か?」
「そんな事じゃねぇ!」
「すっ・・・済まなかった、気分を悪くしたら謝る! 慰謝料も払う! だから許してくれ!」
「・・・ぷっ」


 彩香は思わず吹き出した。
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