TRIGGER!
「誰が本気にしてんだよバァカ。面白ぇなこのオヤジ」


 柴崎は、顔を真っ赤にしてわなわなと震えている。


「あれれ? 怒ったぁ? でも時間稼ぎたいんだろ? お前の手下共が加勢に来るまで、な」


 彩香が言うと、柴崎はあからさまに固まった。
 片手で銃口を向けたままタバコを取り出して、彩香はため息まじりに呟く。


「分かりやすいな。それにしちゃ、時間が経ちすぎてねぇか?」


 彩香がこの店に来た時に援軍を呼んだのなら、もうとっくに何十人もここに来ていてもおかしくない。
 だが、援軍はおろか、店からは物音ひとつしない。


「あたしの目的はなぁ」


 ふうっと、柴崎に煙を吹き掛けて、彩香は言った。


「“ドア”の破壊。これだけだ」


 柴崎は今度こそ、怒りに顔を歪ませた。


「かっ・・・!」


 ヒクつく口元を必死に動かし、柴崎は言葉を発する。


「構わん、撃て!!」


 言い終わらないうちに、彩香は発砲した。
 後ろに立っていたガード三人のうちの一人に向かって。
 ホステスは、いつの間にか一人になっている。
 その代わり、さっきまではここに居なかった空手の道着を着た男が、残り二人のガードの銃を、身軽な動きで弾き飛ばす。
 さっき彩香にシャンパンを注いでくれたホステスと同じく、その空手の男の首元には、少し目立つホクロがあった。
 彩香とそのホクロの男二人がかりで、ガードはあっという間に倒れ。
 ようやく我に返った柴崎が逃げようと、VIPルームの入り口に向かう。
 だが、ここに入って来た二人に行く手を阻まれて。


「おっとぉ・・・これから何処かにお出掛けかい、親分さんよ」
「あぁ、あなたの所の黒いスーツを着た人達、説得して帰って頂きました」


 そこに立っていたのは、ジョージと風間だった。
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