TRIGGER！

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　次の日。
　彩香の部屋のドアチャイムが鳴ったのは、午前九時過ぎだった。
　昨日朝方まで繁華街で飲み明かしていた彩香は、当然の如くまだ夢の中だ。
　そんな事だろうという峯口の予想は、当たっていたという事になる。
　まぁ、峯口じゃなくても、予想出来る事ではあるが。
　２度、３度とチャイムが鳴り、彩香は少し寝返りを打つ。
　だがしばらくして、ガチャリ、とドアが開いた時、彩香は飛び起きた。


「おはようございます、迎えに来ました」


　入って来たのは、峯口の秘書の風間だった。
　彩香は、最高に不機嫌な顔を風間に向ける。


「女の一人暮らしの部屋によくずかずか入って来れるな、おめぇは」
「迎えに来るのは、昨夜社長から聞いている筈。あなたがまだ起きていないのを想定して、これでも遅めに迎えに来たんですが」


　引っ越しの話は、冗談ではなかったらしい。
　昨日何時に帰って来たのか、何処でどの位飲んだのか。
　どうやってここまで帰って来たのか、何故床で寝ているのかも、寝起きの彩香には全く思い出せない。
　キャミソールとパンツだけで寝るのは、いつもの癖だから納得出来るが。


「つーか・・・」


　彩香は、風間を睨む。


「あたしのこの格好見ても、何とも思わねぇのかよテメェは」


　一応、近くにあったクッションを抱えているあたり、何とも笑える感じがしたが。
　風間は彩香のクローゼットの中の洋服を、持って来た段ボールに詰め込む作業をしながら答える。


「何とも思いませんね。強いて言えば、女の子なんだからもう少し部屋を綺麗にしておいた方が…」


　言い終わらないうちに飛んで来たクッションを、風間はひょいと避ける。
　彩香は歯軋りしながら立ち上がると、昨日脱ぎっぱなしのデニムのミニスカートを拾って。
　見ると、テーブルの上には少しのスナック菓子と、ビールの空き缶が何本か転がっていた。
　あれだけ飲んで帰って来たというのに、どうやらまた飲んだらしい。
　記憶がないから分からないが。