TRIGGER!
「んじゃ、そう言う事でな」


 行くぞー、と、ジョージと風間は裏口から現実世界に戻って行った。
 彩香も後に続こうとして、柴崎を振り返る。


「たっ・・・頼む、助けてくれ・・・!」


 必死でそう訴える柴崎に、彩香は近付いた。


「何でも言う事を聞く! だから」
「命乞いしたか?」


 無表情で、彩香は言った。
 意味が分からずに、柴崎は彩香を見つめる。


「アリスもそうやって、命乞いしたか?」
「・・・!?」


 柴崎は、身体を強ばらせた。


「おっお前・・・アリスと知り合いなのか?」


 やっとの事でそう言葉を絞り出した柴崎に近付いて、彩香は笑う。
 その笑みは冷徹で、柴崎の背中に悪寒が走った。


「さぁな」


 彩香は言って、柴崎の耳元に、唇を近付けた。
 そして、何か耳打ちをする。
 その言葉を聞いて、柴崎はガタガタと震え出した。


「おっ・・・お前が、あの・・・!」
「名乗ったくらいでガタガタ言うんじゃねぇよ。ま、そんな事よりテメェの心配でもするんだな」


 おーい彩香ー、とドアの前で待っているジョージと風間に屈託の無い笑顔を向けると、彩香は戻って行った。
 後にはロープでぐるぐる巻きにされた柴崎が残される。
 だが柴崎は、ロープを解く気力もないらしい。


「あれが・・・あの女が・・・悪魔だった・・・」


 うわ言のように、ブツブツと呟くだけだった。
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