ラジオドラマ
<Vampire>

 この国はいつから、こんなことになったのだろうか?


 ジュードは過去にこの国にきたことがある。


 そのときは、奥ゆかしくも温かいこの国にどこか共感を覚えた記憶がある。


 島国特有の自尊心みたいなものは見受けられたが、それでも温かい国だったのは覚えている。


 しかし、今はどうだろう?


 人に溢れ、ゴミに溢れ、所狭しと人は急ぎ足で歩く。


 ・・・・まるで、何かに迫られているように・・・。


 別にそれに対して嫌悪を抱くことはない。


 ・・・・・・・・・・なぜなら・・・・それこそが平和の証・・・。


 それこそが・・・・豊かであることの証だからだ・・・・・・・。


 もし・・・・・・・彼女が、この時代のこの国に生まれていたら・・・・・・。


「何を考えているのやら・・・。」


 そこまで思考をめぐらせて、ジュードは頭を振った。


 長く生きるというコトは、それだけ多くの地獄を見てきたことだ。


 戦争は何度も見た。


 人が人を殺す様も大量に見てきたし、実際に自分自身も数多くの人間を殺してきた。


 そして・・・・・・・・その中で彼女と出会い・・・・・別れた・・・・・・・。


 時代が悪いのか・・・人が悪いのか・・・。


 今はそれを考えるべき時ではない。


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