ラジオドラマ
<Vampire>



 ・・・・・・・何と言う若い青年なのだ。


 悠人を見た第一印象はそれだった。


 魔道師は過去に何度も見ている。


 吸血鬼に対抗してきた魔道師も何人も知っている。


 だが・・・その中にこれほど若い者が過去にいただろうか?


 誰も生贄を使わず、自らが犠牲になれど、他人を傷つけたくないと願う魔道師。


 ・・・・・・その若さで、何と言う強靭な意思か・・・。


「仲が良いな・・・決戦前に痴話げんかとは・・・。」


 彼の前に現れるや否や、そんな言葉を口にする。


 白装束にワンドに聖書。


 真似事だとはいえ、その格好から、吸血鬼の戦い方は心得ているようだ。


 それでも、夜に戦いを挑んだのは間違いだったな。


 補給はしてなくても、この時間帯のヴァンパイアに挑むほど、愚かなことはない。


「うるせぇよ・・・。てめぇこそ、そんな余裕ぶっこいてていいのか?ここは、既に俺のテリトリーだぞ。」


 確かに、魔方陣が敷かれ、月明かりも十分。


 星の並びもばっちりだ。


 魔法使いにしてみれば、格好の条件。


 ・・・・・・・だが・・・。


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