ラジオドラマ
<Wizard>


 こいつは、突然何を語りだしたのだろうか・・・。


 悠人は突然語りだした、吸血鬼に困惑の色を隠せなかった。


 だが、不思議とその話は聞かなければいけない気がした。


 ただ・・・何となく・・・。


 何となく、そう思ったのだ。


「そこで、一人の少女がいた。どこにでもいる戦災孤児だ。当時は珍しいことではない。だが、そいつは花を愛し、心優しく、もちろん誰も傷つけたことなどなかった。」


 昔を思い出すような瞳。


 どこか、悲しい思い出を話す瞳。


 だから、聞かなくてはいけなかった。


「その少女はどうなった・・・?」


 結論なんて、聞かなくても想像がついたが、それでも聞かなくてはいけないような気がした。


「・・・・・・・殺されたよ。本来、国を守るべきはずの憲兵によってな・・・。」


 予想通りの答え。


 1000年と言う月日は短くない。


 そこには、どれほどの出会いと別れと・・・そして、地獄があったのだろうか・・・。


 わずか17年しか生きていない悠人に、それを知るすべはない。


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