真夜中プリズム
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夏休み初日。
はりきって目覚ましをかけずに寝たせいで起きたのはお昼の12時を過ぎた頃だった。
あたしを起こしたのは真夏くんからのメールだ。
『いつものところにさん時に』
絵文字もないたったそれだけのメールを、あたしは時間をかけて読んだ。
電源ボタンで画面を消して、スマホをテーブルの上に置く。ぐっと両腕を上げて伸びをした。窓の外は夏らしい青い空だ。
あたしは、ひとつ深く呼吸をしてから、身支度のために部屋を出た。
学校の近くにあるご夫婦で営む小さなパン屋さんでおやつのパンをいくつか買った。名物のカレーパンと、パリパリふわふわのクロワッサン。
それでも、約束の時間よりは少し早く着いてしまった。真夏くんはいつも早いけど。さすがにまだ来てないかなあ。
わかんないけどまだなら待っていればいいや。そう思いながら、校門から昇降口までの道をのんびりと歩いて行く。
その途中でふと、足を止めたのは。甲高いピストルの音に誘われて目を向けた先の、懐かしくもある、光景のせいだ。
夏に入ってからより一層部活が盛んになった。大会が多くなるからだと思う。夏休みには一日中活動しているなんて部活もいくつだってある。
初日の今日も昼が過ぎて空が最高に高くなったこの時間、たくさんの運動部がグラウンドを埋め尽くして練習していた。
あたしが見ていたのはその隅だ。あたしも1年前、そこを1日に何度も何度も走っていた。
グラウンドに引かれた真っ直ぐな線。陸上部の短距離選手のための、100のコース。