真夜中プリズム




この頃、あの頃の夢をよく見る。

決まって、100を走っている夢だ。


他に何もない直線の上をただあたしは走っている。

あたし以外の人は見えない。両脇はぼんやりとかすんで、誰かいるのかいないのか、それすらよくわからない静かなどこかのトラックの上。


はっきりと浮かんでいるのは、自分の進む真っ直ぐな道と、それを見下ろす、果てしない空。

それは目も眩むほどの青で、雲はひとつもなくて。太陽は大きくて、とても近い場所で光っている。


夢の中のあたしは、いつかのままの姿で走っていた。

体は軽やかで、足は自分の思うように動く。どこまでも進んでいけそうに、鼓動を繰り返しながら。


ゴールラインにはいつまでも着かない。だけどそれは不安じゃない。

できることならこのままずっと走り続けていたかった。だってもう知っていたんだ。このさらに向こう側の景色が、いったいどんなものなのか。


──気づけばいつも、地面はいつの間にか消えていた。

代わりにあたしは、青い空の上を飛んでいるんだ。

それはどこまでも広がっていた。果てしなく、遥か彼方。あたしが一歩踏み出すたび、それはさらにどこまでも広がる。


風の中、ひとりきり。あたしは自分の鼓動だけを聞きながら。

そのとき確かに、奇跡みたいな、青い世界を飛んでいた。
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