真夜中プリズム




駅の側のオシャレなカフェは絵奈が見つけた素敵スポットだ。

店内の雰囲気もとても良いんだけれど、あたしと絵奈は特にこのテラス席が気に入っている。


駅を中心にしたこの商店街の通りは、夏休みだからかあたしたちとおんなじ学生っぽい人たちの姿が多い。

耳障りじゃないざわめきと店内からの静かな音楽を聞きながら飲むミルクティーは、今日も程よく甘くておいしかった。


5日も続く晴天のせいで空気はすっかり乾いている。

雲が無くていいって真夏くんは喜んでいたっけ。

夜空の星を何より綺麗に見るためには、やっぱり空が透き通っていることが一番大事だ。


「あーもう来年は絶対勝ってやるから!」


絵奈が、オジサンのヤケ酒みたいにオレンジジュースをぐいっと飲み乾した。

コップをゴンって置いてプハーってやる。あ、まさにオジサンのヤケ酒。


「お疲れさま絵奈。次もまた目指せるよ」

「あたりまえ! だって今年あそこまで行けたんだもん、来年は絶対インハイ出られるから」


悔しそうな顔をしながらも力強く言うから、絵奈ならきっと大丈夫だって、あたしは思う。


テニスのインターハイ予選。絵奈は、ベスト8を決める試合で惜しくも負け、今年の夏を終えた。

そこで絵奈が負けた相手はその大会で優勝して、インターハイ出場を決めたらしい。


「嬉しいけど悔しいよ、だってもし勝ててたらあたしが優勝できたかもしれないじゃん」


そう絵奈は言っていた。
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