真夜中プリズム

自分で言っちゃうところがアレだけど、高良先生は本当にみんなが認めるイケメンだ。

背が高くて、犬顔で、スポーツも得意で、この時期はいつも日に焼けてて。

噂じゃこの学校の卒業生らしい。優秀で、3年生のときには生徒会長をやっていたんだとか。

当然、そんなだから、生徒からの人気も厚い。軽くて口が悪いけど頼りになる分、女子だけじゃなくて男子からも。

まだ20代で若いけど、学年主任のオジサン先生なんかよりもよっぽどだ。ううん、若い分、あたしたちと近い目線で接してくれるから余計に信頼できるんだと思う。

あたしも、なんだかんだでみんなと同じ。言わないけど、先生のことは尊敬してる。

2年生になって、高良先生のクラスになったけど、でも、あたしは先生が担任になるよりももっと前から、先生のお世話になっていたから。


きっと、先生にとってのあたしは、その期待を裏切った、最悪の生徒なんだろうけれど。



「じゃあ先生、失礼します」


ぺこりと頭を下げて帰ろうとすると、高良先生に呼び止められた。「篠崎」と、少し低い先生の声に、あたしは振り返る。


「お前、もう帰るのか?」

「はい、そうですけど」

「そうか……なあ篠崎、お前もう、部活はしないのか」


先生の顔を、じっと見てしまった。

答えるのにそんなに間は空かなかった。あたしは「はい」と、それだけを答えた。

高良先生の顔つきが少しだけ変わる。寂しそうな、悲しそうな。

自分もおんなじ顔をしちゃってるんじゃないかって思って、慌てて顔に力を入れた。もう誰かの前で、こういう気持ちは見せないって決めている。
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