真夜中プリズム


今日は1学期の終業式。

朝から全校生徒が体育館に集まって、なんの意味があるのかもわからない校長先生の話を聞いた。

体育館は夏の暑さとたくさんの人の熱気が合わさって、むわっと気持ち悪い空気が溜まっている。じわっと滲むのはべたついた汗だ。垂れるそれは無視したまま、あたしは校長先生の声だけを聞いて天井に挟まったバレーボールを眺めていた。

もう夏だなあって、今さらなことを思う。



「引き続き、表彰式及び壮行会を行います」


司会の教頭先生がマイク越しにそう言うと、生徒のカタマリから外れて端に座っていた数人の生徒が立ち上がり舞台に登っていった。

いくつかの大会やコンクールで優秀な結果を残した人たちの表彰式だ。興味のない人が大半だけど、校長先生の話よりはずっと楽に見てられる。


順に名前を呼ばれて渡される賞状や粗品。あたしはまわりに合わせてぺちぺちと彼らに拍手を送る役目。

隣のクラスの女の子が、作文のコンクールで全国一の賞を貰っていた。あの黙々と作業をしていた美術部のグループが、立派な展覧会で入賞していた。

創部間もない水泳部が地方大会で上位に食い込んでいた。強豪と言われる有名な剣道部が、今年も順調に各大会で好成績を残していた。

そして、陸上部からは、この間の大会で優勝した生徒の表彰。


「おめでとう」


校長先生から賞状とトロフィーを受け取ったさゆきは、振り返ってこちらを向くともう一度深く頭を下げた。

同時に鳴る拍手。その間にさゆきがあたしのほうを見た気がしたけれど、こんな人数の中だもん、たぶん気のせいだと思う。

さゆきにも拍手を送った。ちょっとだけ長めにした。さゆきの表彰は一番最後だったから、叩きすぎで手のひらが少ししびれていた。
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