真夜中プリズム

表彰式が一通り終わるとその流れで壮行会も行われた。

全国大会へ進むいくつかの部活動を激励するための会だ。インターハイへの出場を決めたさゆきも、その会の主役のひとりだった。


校長先生のふたたびの長い話のあと、選手である生徒たちの紹介があった。ひとりずつ前へ出て、マイクを持って挨拶をする。

さゆきの順番はまた最後だった。隣の剣道部の人にマイクを渡されて、照れくさそうに高い舞台の上から笑顔でみんなに手を振るさゆき。

その姿を眺めながら、ふと、去年あの場所に立った自分のことを思い出した。


あたしも同じように、みんなから大きな拍手を送られた。正直こそばゆかったっけ。褒められるのも、応援してもらうのもとても嬉しいけれど、本当のことを言うと少し困惑もしていた。

誰かが言うから。誰かのために。そういうつもりで走っていたわけじゃない。だから賞賛の声は素直に嬉しくても、いまいちピンとこなかったっていうのが正直なところだ。

誰かからより自分に一番褒められたかった。なんのためにって、いつだって自分自身のためにあたしは走っていたから。


他の誰よりも速く。100メートル先のあのラインまで。


鮮やかな景色を。心が止まるほどの青だけの景色を。どこまでも広がる世界を。

もっと。もっと。見ていたくて。


永遠に続きそうなほどに長かった。でも本当は、10数秒のほんのわずかの時間だった。

不思議なんだ。速く走れば走るほど、それはどんどん長く続くような気がして。あの景色も……まぶしい光にも、近づけるような気がして。


それは、あたしが持っていたとても強い光だった。

一本道のあたしの世界をいつだって明るく照らしていた、特別な。


あたしの、たったひとつの、光だったんだ──

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