I love you に代わる言葉

　玄関に、一人の女が立っている。
　女はボクをじっと見据え、ボクもただじっと睨み上げる。女がボクに向ける視線には、何の感情も込められてはいない。
　こいつを最後に見たのはいつだったか。
　金髪とまではいかないまでも、それに近い色のバサバサな長い髪の毛。潤いの無い軋んだ人形の髪みたいだ。目の淵が黒く囲われていて、その周囲もギラギラしている。赤く塗られた唇。濃い化粧を施し、露出が無駄に多く、何処で働いて何をしているかなんて一目瞭然な、ボクにとっては下品でしかない服装で、いかにもな風貌の女。
　ボクが好きになったおねーさんとは似ても似つかない間逆のこの女は……


　ボクの――母親だった。