I love you に代わる言葉
ボクはフッと不適な笑みを洩らした。女はそれが気に障ったらしく、睨みつけるようにボクを見る。
「ホントあんた可愛くないわ。ここはあたしの家でもあるんだから、住まわせてやってるって事忘れないでくれる? 追い出したらあんた行き場無くなって、それじゃあ流石に可哀想でしょ? 死んじゃうかも知れないし、警察沙汰にだってなりかねない。あたしも一応あんたの親だからそれくらいの情はあるのよ?」
女は口角を吊り上げて笑いを洩らしながらそう言った。
両の拳が、憎しみに震え出す。
住まわせてやってる? ボクはお前に何かを乞うた覚えはない。
この女はボクに対して情など一切持ち合わせてはいない。ボクは悟る。こいつが重要視している事は本来ボクの生死じゃなく、自分の立場が危うくなる事だと。
育児放棄をした時点で、お前の人としての価値などゴミ以下だというのに。悪事がバレず罪を問われなければ無問題だと思い込んでいる様はなんて愚かだ。
ボクは。ボクはこんな奴にッ……。
「ホント、あんたが女の子なら良かったわ」
そう言った女を、ボクは無言で睨みつけるだけだった。だけどボクの双眸は、燃える様に熱かった。瞳が赤く染まってしまったんじゃないかと錯覚を起こしそうな程に。
仮に女が生まれていたとしても、この女は育児放棄をしただろう。こいつが欲しいのは、自分の思い通りになる人間だけだ。
「あんたがどうしてるか見に行けって母さんに言われたけど、その様子なら困った事なんて無さそうね~。それにしても……、」
女はボクの全身を見た後、言葉を続ける。
「あんた生意気に高校通ってんだぁ。母さんから金貰ってないで働きなさいよ」
さっきから間延びした喋り方が不愉快だった。発言も、こいつも。こいつの、全てが。
それでもボクは何も言わなかった。そしてこの場から一歩たりとも動かなかった。一声発すれば、一歩踏み出してしまえば、ボクは感情任せに何をしてしまうか解らなかったから。
ただじっと堪える事が出来たのは、ボクの脳裏に浮かぶ、おねーさんの優しい笑顔があったからだ。――ボクはこいつ等の様にはならない。
静かに佇むだけのボクをつまらなく思ったのか、はたまた自分の発言に心傷付けられ言葉を失っていると思ったのか、どちらか定かではないが、女はフンッと鼻を鳴らして乱暴に家から出て行った。
恐らく、もう二度とこの家には来ないだろう。
「ホントあんた可愛くないわ。ここはあたしの家でもあるんだから、住まわせてやってるって事忘れないでくれる? 追い出したらあんた行き場無くなって、それじゃあ流石に可哀想でしょ? 死んじゃうかも知れないし、警察沙汰にだってなりかねない。あたしも一応あんたの親だからそれくらいの情はあるのよ?」
女は口角を吊り上げて笑いを洩らしながらそう言った。
両の拳が、憎しみに震え出す。
住まわせてやってる? ボクはお前に何かを乞うた覚えはない。
この女はボクに対して情など一切持ち合わせてはいない。ボクは悟る。こいつが重要視している事は本来ボクの生死じゃなく、自分の立場が危うくなる事だと。
育児放棄をした時点で、お前の人としての価値などゴミ以下だというのに。悪事がバレず罪を問われなければ無問題だと思い込んでいる様はなんて愚かだ。
ボクは。ボクはこんな奴にッ……。
「ホント、あんたが女の子なら良かったわ」
そう言った女を、ボクは無言で睨みつけるだけだった。だけどボクの双眸は、燃える様に熱かった。瞳が赤く染まってしまったんじゃないかと錯覚を起こしそうな程に。
仮に女が生まれていたとしても、この女は育児放棄をしただろう。こいつが欲しいのは、自分の思い通りになる人間だけだ。
「あんたがどうしてるか見に行けって母さんに言われたけど、その様子なら困った事なんて無さそうね~。それにしても……、」
女はボクの全身を見た後、言葉を続ける。
「あんた生意気に高校通ってんだぁ。母さんから金貰ってないで働きなさいよ」
さっきから間延びした喋り方が不愉快だった。発言も、こいつも。こいつの、全てが。
それでもボクは何も言わなかった。そしてこの場から一歩たりとも動かなかった。一声発すれば、一歩踏み出してしまえば、ボクは感情任せに何をしてしまうか解らなかったから。
ただじっと堪える事が出来たのは、ボクの脳裏に浮かぶ、おねーさんの優しい笑顔があったからだ。――ボクはこいつ等の様にはならない。
静かに佇むだけのボクをつまらなく思ったのか、はたまた自分の発言に心傷付けられ言葉を失っていると思ったのか、どちらか定かではないが、女はフンッと鼻を鳴らして乱暴に家から出て行った。
恐らく、もう二度とこの家には来ないだろう。