I love you に代わる言葉
「お前行く宛てあんのか? 俺ん家に泊まらせてくれって事は、まぁ……あれだろ? なら一泊じゃなくて当分いればいいじゃねーか。テスト終われば夏休みだしよ。ま、残り数日は俺ん家から学校通わなきゃなんねーけど、お前がそれでもいいんなら」
 思い掛けない提案に驚いた。それは願ってもない事だ。だけど、すぐに頷けるものではない。
「アンタ勝手に決めてるけど、家には家族いるんだろ? 家族の許可が必要なんじゃないの」
「家には母親しかいねーから大丈夫だろ。弟もいるけど、弟は学校の寮入ってるし。親にはこれからすぐに連絡入れといてやるからよ。部屋は弟と一緒だったけど寮に入ってからは一人部屋みたいなもんだ」
「だけど寮生なら夏休み帰省するんじゃないの?」
「部活で忙しいから、帰省は盆だけだろ。去年もそうだったしな。俺と違って優秀な奴だからな」
「ふーん」
「その事はまた盆が近付けば考えればいんじゃね? まっ、悪いようにはならねぇよ!」
 頼もしいとは到底言えないが、それでもこいつに感謝の気持ちが芽生えたのは確かだった。礼を素直に述べられる程に、ボクは大人にはなれなかったけれど。
「てか教室に行こうぜ」
 右手の親指を立ててくいっと背後を指しながら今井は言った。足元に置いたスポーツバッグを持ち上げて肩に掛けると、先に動き出した今井の後にボクも続いた。



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