I love you に代わる言葉
思考を巡らせ硬直状態のボクにいよいよ痺れを切らした今井が、「おい、日生……?」と声を掛けた所でボクの意識は今井に向く。
「どうしたんだよ?」
「いや、」
何でもない、そう続けようとしたが、「日生君!」と誰かに名を呼ばれ、それは遮られた。
声がしたのは前方、視線を上げれば振り返ったシンと一瞬目が合った。
ボクを呼んだのは、シンに呼び止められたメガネの男だった。「丁度良かった」と言って歩み寄ってくる。
「六組の笹山君が、日生君呼んでくれって」
用件だけ言うと、メガネ男はすぐに一組の教室に戻って行った。
何でもない事のように振舞ったが、その言伝は、僅かだがボクに動揺を与えた。
「ねぇ、悪いけどこの荷物持って先に教室行っててよ。あいつと話してくるから。――ボクもあいつに用があったから丁度良かった」
そう言って通学鞄とスポーツバッグの両方を差し出せば、今井はそれを受け取りながら「お前昨日あいつの事知らなかったじゃねぇか」と言う。
「あいつの名前を知らなかったんだ。あいつ自体は知ってる」
「ふーん。でもあんま時間ねぇぞ」
「長くなりそうなら別の機会にするように言うさ。……あいつも考えてる事は多分、同じだろうからね」
恐らくだが、あいつの話も短くはない。ボクはそう考えた。
「? わかった」
今井は状況が飲み込めないのか複雑な心境をそのまま表情に乗せていたが、何も言わず一組の教室に入っていった。
それを見送り一息ついてシンを見れば、視線が交わり、奴はゆっくりとこちらに近付いてきた。
「どうしたんだよ?」
「いや、」
何でもない、そう続けようとしたが、「日生君!」と誰かに名を呼ばれ、それは遮られた。
声がしたのは前方、視線を上げれば振り返ったシンと一瞬目が合った。
ボクを呼んだのは、シンに呼び止められたメガネの男だった。「丁度良かった」と言って歩み寄ってくる。
「六組の笹山君が、日生君呼んでくれって」
用件だけ言うと、メガネ男はすぐに一組の教室に戻って行った。
何でもない事のように振舞ったが、その言伝は、僅かだがボクに動揺を与えた。
「ねぇ、悪いけどこの荷物持って先に教室行っててよ。あいつと話してくるから。――ボクもあいつに用があったから丁度良かった」
そう言って通学鞄とスポーツバッグの両方を差し出せば、今井はそれを受け取りながら「お前昨日あいつの事知らなかったじゃねぇか」と言う。
「あいつの名前を知らなかったんだ。あいつ自体は知ってる」
「ふーん。でもあんま時間ねぇぞ」
「長くなりそうなら別の機会にするように言うさ。……あいつも考えてる事は多分、同じだろうからね」
恐らくだが、あいつの話も短くはない。ボクはそう考えた。
「? わかった」
今井は状況が飲み込めないのか複雑な心境をそのまま表情に乗せていたが、何も言わず一組の教室に入っていった。
それを見送り一息ついてシンを見れば、視線が交わり、奴はゆっくりとこちらに近付いてきた。