I love you に代わる言葉
何を言っているんだこいつ……何の為に? だけどそれを聞いたら、こいつが告げるのを躊躇った『目的』とやらに繋がってしまうのか。
「勿論、肯定したにも関わらずそれを望んでねぇ場合は、もうあんたに関わらねぇよ」
「何の為にそんな事をするのさ」
「『本当の目的』は、俺が言わなくても、あんたが姉と昵懇の仲になればいつか知る事になるだろうさ。俺が言えるのは俺の目的だけだ。……あんた、ツンツンしてるが結構本気なんだろ? 別に揶揄したりはしねぇ。俺にとっても姉にとってもその方がいい。あんたが本気で姉を好いてくれてるんならな。あんたが望むなら俺はあんたに協力するが、どうする?」
ボクにとって都合のいい申し出は、砕かれた猜疑心を危うく再構成させられそうになったが、こいつを見る限り、ボクを欺こうとする素振りは見当たらない。
どうすると聞かれてもどうすればいい? ボクはこういった事に不慣れだし正直よく解らない。こいつの意図も読めない。くそっ、今井も連れてくれば良かったか。言葉そのものの意味は解るが、真意が解らなければ答えようがないじゃないか。
僅かに動揺を覚えた心内を沈める為、小さく息を吐いた。
「ボクの中で、あの時の答えは出たさ。それが『好き』という感情だと教わった。――アンタは知ってたんだろ? ボクがそう結論を出すと。だからこうして来たんだ」
「まぁな」
「癪だよ、アンタにこんな事を話すのは。……ボクは正直解らない。こんな経験は初めてだ。ボクはこの気持ちをどうしたいのか、どうすべきか解らない。どうなりたいのかも、解らない。それにアンタさ、協力って言ったけど具体的にはどうするのさ」
「具体的、って言ってもな……それは状況次第だ。まぁ、あんたの想いを叶えてはやりたいさ。それが俺の目的だからな。それに、解らなくてもいいさ。解るまで考えればいい。あんたみたいな男なら大歓迎さ」
「……は? アンタの姉の気持ちはどうなるのさ。場合によっては即お終いだろ」
「まぁな。この際、姉の気持ちは置いとこうぜ。姉があんたを好きになるか分からねぇが、間違いなく言える事がある」
そこで一旦止めると、再び憂いを帯びたものになった。
それを見せられると、どうにも言葉を発せられなくなる。悪態などつけなくなる。それ程に意味深長であり、悲しみの色は濃い。
笹山真はその表情を浮かべたまま、口を開いた。
「――あんたなら、姉を救える」
憂いを帯びた真っ直ぐな漆黒の双眸は、それが冗談でも何でもない事を物語っていた。
今、解った。
おねーさんとこいつ、ボクが『似ている』と感じた部分は、単に外見じゃない。こいつが持っている雰囲気だ。例えばどれだけ粗末な服装を纏い裸足で歩いたとしても、そう、どれだけ零落しようとも、そこには失われる事の無い気高さがある。間違いなく、姉弟だ。そして間違いなくこいつも、温かい奴なんだろう。
廊下でこいつを見ていた女達を思い出す。
恋慕を秘め、遠くからしか眺められない奴等。近寄れなくて、近寄る事すら憚れる想い。結局ボクも同じだ。
それは、おねーさんもこいつも、何処までも崇高であるからだ。心がとても、温か過ぎるんだ。
「勿論、肯定したにも関わらずそれを望んでねぇ場合は、もうあんたに関わらねぇよ」
「何の為にそんな事をするのさ」
「『本当の目的』は、俺が言わなくても、あんたが姉と昵懇の仲になればいつか知る事になるだろうさ。俺が言えるのは俺の目的だけだ。……あんた、ツンツンしてるが結構本気なんだろ? 別に揶揄したりはしねぇ。俺にとっても姉にとってもその方がいい。あんたが本気で姉を好いてくれてるんならな。あんたが望むなら俺はあんたに協力するが、どうする?」
ボクにとって都合のいい申し出は、砕かれた猜疑心を危うく再構成させられそうになったが、こいつを見る限り、ボクを欺こうとする素振りは見当たらない。
どうすると聞かれてもどうすればいい? ボクはこういった事に不慣れだし正直よく解らない。こいつの意図も読めない。くそっ、今井も連れてくれば良かったか。言葉そのものの意味は解るが、真意が解らなければ答えようがないじゃないか。
僅かに動揺を覚えた心内を沈める為、小さく息を吐いた。
「ボクの中で、あの時の答えは出たさ。それが『好き』という感情だと教わった。――アンタは知ってたんだろ? ボクがそう結論を出すと。だからこうして来たんだ」
「まぁな」
「癪だよ、アンタにこんな事を話すのは。……ボクは正直解らない。こんな経験は初めてだ。ボクはこの気持ちをどうしたいのか、どうすべきか解らない。どうなりたいのかも、解らない。それにアンタさ、協力って言ったけど具体的にはどうするのさ」
「具体的、って言ってもな……それは状況次第だ。まぁ、あんたの想いを叶えてはやりたいさ。それが俺の目的だからな。それに、解らなくてもいいさ。解るまで考えればいい。あんたみたいな男なら大歓迎さ」
「……は? アンタの姉の気持ちはどうなるのさ。場合によっては即お終いだろ」
「まぁな。この際、姉の気持ちは置いとこうぜ。姉があんたを好きになるか分からねぇが、間違いなく言える事がある」
そこで一旦止めると、再び憂いを帯びたものになった。
それを見せられると、どうにも言葉を発せられなくなる。悪態などつけなくなる。それ程に意味深長であり、悲しみの色は濃い。
笹山真はその表情を浮かべたまま、口を開いた。
「――あんたなら、姉を救える」
憂いを帯びた真っ直ぐな漆黒の双眸は、それが冗談でも何でもない事を物語っていた。
今、解った。
おねーさんとこいつ、ボクが『似ている』と感じた部分は、単に外見じゃない。こいつが持っている雰囲気だ。例えばどれだけ粗末な服装を纏い裸足で歩いたとしても、そう、どれだけ零落しようとも、そこには失われる事の無い気高さがある。間違いなく、姉弟だ。そして間違いなくこいつも、温かい奴なんだろう。
廊下でこいつを見ていた女達を思い出す。
恋慕を秘め、遠くからしか眺められない奴等。近寄れなくて、近寄る事すら憚れる想い。結局ボクも同じだ。
それは、おねーさんもこいつも、何処までも崇高であるからだ。心がとても、温か過ぎるんだ。