I love you に代わる言葉
 階段を上がり今井の部屋に通されて最初に思ったのが――ああやっぱりな、だ。
「悪ぃ。今片付けるからよ」
 そう言って苦笑しながら頭をガシガシ掻く今井。予想通りだったから呆れもしなかった。
 ボクは荷物を部屋の前に置き、片付ける様子を少しの間眺めていたが、途中から階段に座っていた。
「よしっ、いいぜ」と声が掛かり、十分後に漸く部屋に足を踏み入れる事が出来た。本人は片付けたつもりだろうが、殆どが隅に寄せられただけだ。まぁでも、文句は言うまい。世話になる身だ。
「少し待ってろ。茶ぁ、持ってくっから。――ああ、昼飯どうする?」
「ボクはいらない。腹が減ってるならアンタだけ食べなよ」
「一人だけ食うのもなぁ……」
 今井はそう言って困った顔で腕を組んだ。
「気にしなくていいよ。ボクは別に腹が減ってないだけだ」
「そうか? じゃあ……。ま、何か飲み物持ってくっから待ってろ」
 今井はそう言って階下へと下りて行った。ボクは部屋を入ってすぐの所に腰を下ろした。
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