I love you に代わる言葉
 部屋を見渡す。広さは六畳程か。家の造りの割りに、家具や空気は真新しい。
 全体的に白と黒で統一されている。部屋を入って正面に窓があり、その上部にあるレールに吊られたカーテンは黒色。部屋の中心に位置し、今ボクの前にある長方形のテーブルも黒色。その向こうに並べられた二つのカラーボックスは白色。その一つが横に倒されてテレビ台として使用されている。因みにテレビは黒色だ。テレビの後ろにはごちゃごちゃとコードが繋げられており、それらと繋がっているものはゲーム機だ。部屋を入って左側には、収納ボックスが三段重ねられている。敷かれた絨毯は白色で、色のバランスや家具の配置等は悪くなかった。悪くはないのだが。
 ボクは溜息をついた。
 コードは絡まってどれがどれか解らないし、布団は敷きっ放し、衣類は脱ぎ捨てられていて替えの制服(夏服)も皺くちゃだ。本棚として使用されているカラーボックスの中身も整頓されておらず、恐らくその中に元々片付けられていたであろう雑誌類も今では部屋の片隅に追いやられている。取り敢えず散らかり過ぎだ。まぁ、ゴミが捨てるべき場所に捨ててある事だけが救いか。
 ふと視線を上げる。今井の部屋にもクーラーは無いのか。ただ、扇風機は置いてある。
 そんな事を考えていると、今井が戻ってきた。
「麦茶で良かったか?」
「何でもいいよ」
 テーブルに置かれたトレー上には、硝子のコップが二つと、カップラーメンと箸が置かれていた。コップには今井が言った通り麦茶が注がれていて、氷が二つずつ入っている。カランと氷が硝子にぶつかる音が涼しげだ。
 テーブルの横、ボクの右斜め前に腰を下ろした今井を見れば、今井は既に部屋着に着替えていた。訳の解らぬ絵柄がプリントされた黄色のTシャツに、黒いジャージのズボンという格好で、何だか何もかもが今井らしかった。
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