I love you に代わる言葉
それからやや遅れて笹山真が一組の教室へ入ってくる。
「悪い、遅くなった」
そう言ってボク等の傍に歩み寄るが、それにもボクは無反応。笹山真もボクが不機嫌である事は一目で理解したようで、苦笑していた。
「やっぱり日生様はご機嫌斜めだったか。――悪かったな、今井を呼び出したのは俺なんだ」
「は? どういう事さ。送信相手を間違えた訳ではないんだろ」
「先に今井に聞いておきたい事があったんでな」
笹山真はそう言って今井を流し目で一瞥した。今井はそれに気付いていないようだし、ボク等の会話について来られていない。当然か。笹山真から来たメールについて、話していなかったからな。ボクだって現在の状況もこいつの思惑もよく解っていない。
「今井と話すのにも、時間が今しか無かった。話が思ったより長引いてな、結果日生を待たせる事になった。悪い」
「ま、いいさ。で? 話って何なのさ」
機嫌が直らないボクに、笹山真はまた苦笑した。
「あんた今、今井の家に住まわせて貰ってるんだろ? 事情は今井から聞いた。その為に今井を呼び出したんだ。あんたに直接聞いても教えて貰えなかっただろうしな」
それを聞いてボクは今井を冷たく睨んだ。「悪ぃ……」と小声で謝罪するが、すぐさま笹山真が今井の一歩前へ出て擁護する。
「今井は悪くねぇんだ。俺が無理矢理聞き出したからな」
嘘だな、と思った。こいつは無理矢理人の情報を聞き出す奴じゃない。問うたのは事実だろうが、言い淀みながらもすんなりと今井は話してしまったんだろう。
……まったく、ムカつくくらい出来た男だ。恩着せがましくなく、嫌味のない配慮。周囲の状況を冷静に把握・判断する事、人情の機微を理解する事に長けている奴なんだろう。粋な男。大人だってそういう奴は少ない。
ボクは小さく溜息をついた。笹山真の言葉で幾らか苛立ちも収まり、先程よりか落ち着いた口調で言った。
「まぁいいさ……それで?」
「あんたはこれからどうするつもりなんだ? ずっと今井の家に居候する訳にもいかないんじゃねぇか?」
「――けどよ、一応夏休みの間は俺ん家居られるし。その間に今後についてを決めようって日生と話したんだよ。親にも許可は取ってある」
笹山真は、横から口を挟んだ今井に顔を向けた。幾らか厳しい目付きに見えた。
「悪い、遅くなった」
そう言ってボク等の傍に歩み寄るが、それにもボクは無反応。笹山真もボクが不機嫌である事は一目で理解したようで、苦笑していた。
「やっぱり日生様はご機嫌斜めだったか。――悪かったな、今井を呼び出したのは俺なんだ」
「は? どういう事さ。送信相手を間違えた訳ではないんだろ」
「先に今井に聞いておきたい事があったんでな」
笹山真はそう言って今井を流し目で一瞥した。今井はそれに気付いていないようだし、ボク等の会話について来られていない。当然か。笹山真から来たメールについて、話していなかったからな。ボクだって現在の状況もこいつの思惑もよく解っていない。
「今井と話すのにも、時間が今しか無かった。話が思ったより長引いてな、結果日生を待たせる事になった。悪い」
「ま、いいさ。で? 話って何なのさ」
機嫌が直らないボクに、笹山真はまた苦笑した。
「あんた今、今井の家に住まわせて貰ってるんだろ? 事情は今井から聞いた。その為に今井を呼び出したんだ。あんたに直接聞いても教えて貰えなかっただろうしな」
それを聞いてボクは今井を冷たく睨んだ。「悪ぃ……」と小声で謝罪するが、すぐさま笹山真が今井の一歩前へ出て擁護する。
「今井は悪くねぇんだ。俺が無理矢理聞き出したからな」
嘘だな、と思った。こいつは無理矢理人の情報を聞き出す奴じゃない。問うたのは事実だろうが、言い淀みながらもすんなりと今井は話してしまったんだろう。
……まったく、ムカつくくらい出来た男だ。恩着せがましくなく、嫌味のない配慮。周囲の状況を冷静に把握・判断する事、人情の機微を理解する事に長けている奴なんだろう。粋な男。大人だってそういう奴は少ない。
ボクは小さく溜息をついた。笹山真の言葉で幾らか苛立ちも収まり、先程よりか落ち着いた口調で言った。
「まぁいいさ……それで?」
「あんたはこれからどうするつもりなんだ? ずっと今井の家に居候する訳にもいかないんじゃねぇか?」
「――けどよ、一応夏休みの間は俺ん家居られるし。その間に今後についてを決めようって日生と話したんだよ。親にも許可は取ってある」
笹山真は、横から口を挟んだ今井に顔を向けた。幾らか厳しい目付きに見えた。