I love you に代わる言葉

 ――私は、この石が一番光を感じるんです。幾重にも重なった層、不純物を含み暗くなってしまった色彩。そこに寂しい歴史と重みを感じるんです。それが放つ光。とても美しい姿じゃないですか――


 おねーさんが前にこの石について説明してくれた時に言っていた言葉が、不意に脳裏に蘇った。似ている、という事は、ボクのこんな姿さえ美しいと、温かいと、そう思ってくれたと取っていいのか。


 ――汚いものが愚かにも光を放ってその存在を何とか知らせているみたいだ。汚く淀んだ色彩に似合わない光。輝かしい石が並ぶ中でそれはそぐわないし、黒色の石よりも価値を見出せない。黒色の方がまだ光って見える。そこにあるだけ。塊がそこにあって無駄に場所を取る――


 おねーさんが前にこの石について説明してくれた時に、ボクが思った事も、不意に脳裏に蘇った。嫌いだ、そう思ったのは、己の姿がそこにあると、多分思ったからだ。無意識に自分と重ねた。無意識に、似ていると思った。
 同じように似ていると思ったのに、おねーさんはそれを美しいと、ボクはそれを汚いと表現する。大きく異なる思想。絶対に相容れぬと理解しながらも惹かれ、恋した思想、そして人。
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