I love you に代わる言葉
 此処へ来て一時間くらい経ったか。胡坐を掻いたり膝を立てたり、何度か姿勢を変える程居たのに、全然プライベートの話は出来てない。
 おねーさんは説明し終えると、石を窓際に片付け始めた。多分、元々そこに飾っていたんだろう。どう飾っていたのか配置を思い出しながら丁寧に置いている。ボクに背を向けている隙に、ボクは部屋の中を見渡した。
 窓から西日が強く差し込む。窓際に立つおねーさんで少しは遮られているものの、眩しくて目を細める。
 ベッド横の小さな棚を見ると、天使の形をした置物があった。やっぱりこの部屋天使が住んでいたのか。……じゃなくて。
 その隣を見て、思わずボクは瞠目する。
 置物の隣に、伏せられた写真立てがあったからだ。
 あの写真なに? とか聞いてもいいのだろうか。いや、伏せてあるのだから見せたくないのか自分も見たくないのか。あれは元々伏せられていたんだろうか、それとも、ボクが来るから伏せたんだろうか。……気になる。
「そこにある天使の置物、キレーだね」
 取り敢えず、隣の置物褒めてみる。
 背後から声を掛ければ、おねーさんはハッとした面持ちで、ボクを見た。そして置物を見る。此方を見れば逆光になり顔が見辛いが、横顔は西日に照らされとても綺麗だった。が、何処か切ない。西日の所為か。
 おねーさんは窓の方を向いて、またボクに背を向けた。
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