I love you に代わる言葉


 それからボク等は、おねーさんが作ってくれた夕食を平らげた。初めておねーさんの手料理を食べたが、それはもう表現し尽くせない程の感情に全身が包まれた。リビングのテーブルに四人がつく。ボクは今井の隣、シンの向かいに座った。おねーさんと向かい合うなんてボクには無理だったんだ。一緒に食事をする事にも抵抗があったのに。
「うおお! すっげぇ! 美味そう!」
 食事を前にして、パッと明るい表情を見せた今井。褒め言葉が自然に出るのは得だなと思った。
「な! 日生」そうやってボクに振ってきたが、「うん」とか「イタダキマス……」くらいしかボクには言えなくて、やっぱりおねーさんにいい印象なんて与えられる筈もなかった。それでもおねーさんはにこっと笑いかけてくれたけど。
 夕食は、今井の要望で唐揚だった。
「腹減った~唐揚食いてぇ」
 何気無く呟かれたそれをシンがおねーさんに伝えにいった。けど、材料が無かったらしく、おねーさんは急いで買出しに行っていた。それを知った今井は流石に焦ったようだ。
「やべぇ……わざわざ買いに行かせちまった……悪い事したな……」
 なんてぶつぶつ言っていた。おねーさんも今井の為にそんな事しなくていいのに、なんて思った。
 もぐもぐと黙って食していれば、
「どうですか?」
 と、柔らかい声が耳に届いた。おねーさんを見れば、ボクを見ていた。まぁ、今井はずっとうめぇうめぇ言ってたからな。
「……ウマイ」
 ボソッと答えれば、おねーさんはにっこりと微笑み、良かった、一言そう言った。シンはボクを見て何故か苦笑した。何だと問おうとしたが、隣の今井が突然声を上げた。
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