I love you に代わる言葉
部屋を出て引き戸を開け、キッチンへ向かおうと歩き出せば、おねーさんの部屋の扉が目に映る。扉の下の僅かな隙間から明かりが漏れている。まだ起きていたのか……。勝手に冷蔵庫開けるの躊躇われるし、一言何か言っといた方がいいかな。どうすべきかと考えながらキッチンに近付くと。
また、音色が聞こえてきた。……オルゴールだ。
ボクはその場に立ち止まって耳を澄ませる。
……間違いない。夕刻聴いた、あの音色だ。夜だから、音が若干響いて聴こえる。
闇と静寂に包まれた時間帯だからだろうか。夕刻聴いた時よりも遥かに、その音色は悲哀に満ちている。孤独、悲愴、虚無。そして泡沫。夕刻には感じられなかったものが今、溢れ出る。
『今は、いません』
そう言った時のおねーさんの背中が、脳裏に蘇る。何処か物寂しげな背中。それに向かってボクは、そうなんだ、としか返せなかった。
おねーさんは今、何をしているんだろう。何を想い、何を見つめ、何を抱えこの音色を聴いているんだ……?
ボクはただ立ち尽くす。
数秒後、酷く悲しい音色は、夜の闇に溶けるかの如く消えていった。
また、音色が聞こえてきた。……オルゴールだ。
ボクはその場に立ち止まって耳を澄ませる。
……間違いない。夕刻聴いた、あの音色だ。夜だから、音が若干響いて聴こえる。
闇と静寂に包まれた時間帯だからだろうか。夕刻聴いた時よりも遥かに、その音色は悲哀に満ちている。孤独、悲愴、虚無。そして泡沫。夕刻には感じられなかったものが今、溢れ出る。
『今は、いません』
そう言った時のおねーさんの背中が、脳裏に蘇る。何処か物寂しげな背中。それに向かってボクは、そうなんだ、としか返せなかった。
おねーさんは今、何をしているんだろう。何を想い、何を見つめ、何を抱えこの音色を聴いているんだ……?
ボクはただ立ち尽くす。
数秒後、酷く悲しい音色は、夜の闇に溶けるかの如く消えていった。