I love you に代わる言葉
13話 黄昏の風~タソガレ ノ カゼ~
 目が、覚めた。
 真夏だというのに身体は汗でべたついておらず、不快感など一切感じず目覚めた。一瞬此処が何処か解らなかったが、上半身を起こし辺りを見渡せば、疑問はすぐに解消された。ああそうだ、シンの家に来てたんだったな。
 ケータイで時間を確認すれば、まだ朝の五時半だった。当然、二人はまだ寝ている。
 ぐっすり寝ているシンの姿を拝めるなんて貴重だな。これから見る機会は増えるんだろうけど。こいつ、本当に整った顔してるな。漆黒の髪がパサッと目元を覆い、横にも流れている。目を閉じているだけみたいだ。でも、微かに寝息が聞こえる。……ん? こいつ就寝時もピアスを付けてるのか。そういえばいつも同じピアスだ。大事なものなんだろうか。
 今井は……うん、やっぱり今井だ。ヤツは仰向けに寝ていて、口が半開きになっている。アホ面だが、布団は綺麗に被っているようだ。
 そこでふと気付く。真夏なのに布団を被っているという不思議に。あぁ……クーラーが点いていたのか。寝苦しくて夜中にシンが点けたんだろうか。そのお陰か。ボクが不快感無く目覚める事が出来たのは。
 カーテンを少し捲ってみると、外はすっかり明るくなっていて、鳥の囀りが聴こえてくる。今日もいい天気だろう。
 それにしても、喉がカラカラだ。夜中、結局何も飲まなかった。おねーさんの部屋の近くでオルゴールの音色を、立ち尽くして聴いていた。音が止んだ後、おねーさんが部屋の中で動いた気配がしたから、急いで此処に戻ってきてしまったんだ。
 さてどうする。今飲んでしまうか。おねーさん、遅くまで起きてたし今はまだ寝ている筈だ。シンですら起きる気配は無い。
 ボクはベッドから降りると、二人を起こさないよう静かに部屋を出た。
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