I love you に代わる言葉
「! 起きてたのか」
 シンだ。
「アンタか……今何時?」
「七時前だ」
 一時間弱、か。こんな所であんな体勢でよく一時間も眠れたもんだ。そう思う一方で、そんなもんなんだ、とも思う。
「……これは?」
 ボクは膝掛けを軽く掴んでシンに見せた。
「ああ、ねーちゃんだろ。さっき起きてきたからな。突然起こされて、何で日生くんがあんな所で寝てるのかって聞かれたんだ。最初は意味が解らなかったが、リビングで寝てるって聞いて、状況は大方予想がついた。で、説明はしてある」
「……おねーさんは?」
「部屋にいるぜ。そのブランケット、自分で返しに行けよ」
 シンはそう言ってリビングを出ようとしたが、「あ。」と何か思い出したように小さく声を漏らした。
「あと、クーラー点けたのもねーちゃんだ。体勢が体勢だったからな、せめて室温だけでも寝心地良くなるようにってさ」
 シンはそう言って自室に戻って行った。シンの言葉を聞いて顔を上げれば、確かにクーラーが点けられていた。そういえば眠る時暑くて心地悪かった。そして聞かされて初めて気付く。自分は汗ばんでもいないし、ブランケットやらを掛けられていたお陰で、寒くもなかった事に。
 ボクは掴んでいるブランケットを見つめた。
 ブランケットはさ、存在してるから見れば解るし、誰でも思い付きそうな気遣いだと思う。けど、室温とかそういう事はさ……はは……言われなければ気付かないし、物凄い地味な気遣いだと思う。シンに聞かされなければ気付かなかったろう。おねーさんらしくて、何処までもあったかくて……何でこんなに、泣きたくなるんだろう。
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